異次元の長寿ヒット商品・ハーゲンダッツの謎 裏には、こんなに秘密が隠されていた!
さらに91年、同社は世界の国々に先がけて、日本国内でテレビCMをスタートさせた。当初、米国の親会社は「CMが流れると、商品のプレミアム感が損なわれる」と難色を示したそうだが、ブランドエッセンスである「Pure Pleasure(純粋な至福)」「Intimacy(親密)」「Nirvana(安息)」の3つのバランスをとったCMを制作した。このイメージ訴求型のCMがお茶の間に受け入れられて、商品の認知度が上がった。
90年代後半からは、日米共同の商品開発として抹茶味の「グリーンティー」を発売(96年)したり、「アズキ」を発売(03年)するなど、日本らしいフレーバーも投入して人気を高めていった。これらの開発思想が、今春のみたらし胡桃やきなこ黒みつ味へとつながっている。
ちなみにグリーンティー開発当時は「真緑の食べもの」が米国の担当者にはピンとこなかったそうだ。そこで担当者を茶畑や茶室に案内するなど、日本のお茶文化を理解してもらうように努めたという。
正攻法の商品開発、新商品と限定品で市場を活性化
ハーゲンダッツの商品哲学は、半世紀前の創業時から変わらない。食品添加物や着色料が当たり前だった60年代の米国にあって、創業者のマタス氏は「天然素材100%のアイスクリーム」を掲げ、モットーは「Dedicated to Perfection(完璧をめざす)」だった。アイスの原料となるミルク、砂糖、卵白から素材を厳選し、品質を徹底的に追求したという。
その商品哲学は現在も受け継がれ、「特に主原料のミルクへのこだわりは、最も意識しており、乳牛のエサとなる牧草を育てる土壌改良の研究から行ってきた」(同社)。日本では北海道の根釧地区(根室地区と釧路地区)の新鮮なミルクを使っており、酪農家は牧草が育つ土づくり、乳牛一頭一頭の体調に合わせた飼料の調整まで気を配っているという。
「かなり強い味わいの主原料なので、フルーツやチョコレート、ナッツなどの副原料選びにも気を配っている。濃厚なミルクに対抗できる風味を醸し出す副原料は限られているからだ」と、同社は説明する。食品も単独で食べておいしいものと、配合する素材として向くものは異なるので、素材を厳選しながら商品を開発するのだ。
アイスクリームの味に対する消費者の意識は、意外に保守的だ。ハーゲンダッツのミニカップ人気ベスト3は「バニラ」「グリーンティー」「ストロベリー」で、昔も今も変わらない。特にバニラ人気は不動で、これは競合他社も同じである。そのため、人気フレーバーの定番品をガッチリ固めつつ、新商品や期間限定品で市場を活性化させるのが各社の戦略だ。新商品や限定品が大ヒットすれば、定番商品にすることが社内で検討される。