週明け(9月7日)の東京市場は、先週からの円高傾向が止まらず、これを嫌気した株式市場は日経平均株価が300円以上も下げる展開で始まった。原因は、懸念が強まっている中国発の世界経済の混乱というリスクに対して、週末に開かれたG20財務相・中央銀行総裁会議が、これといったインパクトのある対応策を打ち出せなかったことにある。
その失敗のあおりをまともに受けかねないのが、円と日本株だ。市場は「通貨の競争的な切り下げを回避し、あらゆる形態の保護主義に対抗する」というG20のお題目よりも、G20前にデフレ懸念を理由に量的緩和を拡充してユーロ高を阻む覚悟を鮮明にしたドラギECB(欧州中央銀行)総裁の発言のほうにリアリティを感じているからだ。G20が慎重な判断を求めた米国の利上げが遠ざかるようならば、円高・株安傾向に拍車がかかり、市場が日本銀行に「黒田バズーカ第3弾」を催促する展開になりかねない。
円高・株安をきっかけにしたアベノミクス崩壊シナリオに強い危機感を覚えたのだろう。G20の初日にあたる4日、麻生太郎財務大臣は、中国を名指しして厳しい注文を付けたという。「市場の変動は中国が取り組むべき構造的な問題を映す鏡だ」と述べ、同国の過剰生産設備問題やシャドーバンキング(影の銀行)などの不良債権問題にメスを入れるだけでなく、輸出と政府・国有企業主導の投資を主体とする状況から、内需、特に消費を主体とするバランスの取れた体制へ、中国の経済構造を改革するよう迫ったのだ。複数の国から麻生大臣に同調する主張があり、中国も構造改革に取り組むと表明せざるを得なかったようだ。
そうしたムードを反映したのは間違いない。財務省の仮訳を見ても、G20の声明は12項目に及ぶが、そのなかに「通貨の競争的な切り下げを回避し、あらゆる形態の保護主義に対抗する」という文言を盛り込み、先月突然の人民元の切り下げに踏み切った中国がこれ以上の元安誘導を行わないように釘を刺した。