自民、公明両党は14日、個人向けの減税や企業に賃上げを促す税制の強化などを盛り込んだ2024年度税制改正大綱を決定した。来年6月以降に実施する所得税・個人住民税の定額減税では年収2000万円超の富裕層を対象外とし、防衛費増額に伴う増税開始時期の決定は見送った。自民の政治資金パーティー収入問題で「政治とカネ」を巡る批判が高まる中で増税を進める議論を避けた。
自民の宮沢洋一税制調査会長は記者会見し「日本の成長の種をまくことができた」と強調。内容は「大きな減税になっている」と述べた。防衛増税の時期については「政治状況はかなり厳しい風が吹いており、今年は決定しない」と説明した。
総合経済対策の目玉だった定額減税は、1人当たり所得税から3万円、個人住民税から1万円をそれぞれ差し引く措置。年収2000万円超を除外するため、国会議員も対象外となる見込みだ。定額減税は1回限りだが、大綱は「賃金や物価の状況を勘案し、必要があると認めるときは家計支援の措置を検討する」として、複数年での実施や減税以外を含めた追加措置に含みを残した。
少子化対策で児童手当の支給対象が高校生に広がることに伴い、16~18歳の扶養親族がいる場合に所得から控除できる金額は縮小し、1人につき所得税で年間38万円から25万円に、個人住民税では33万円から12万円に減らす方針。26年分以降の所得税と27年度分以降の個人住民税からの縮小を目指し、来年末に正式に決める。
子育て世帯の支援では、所得から差し引ける一般枠の生命保険料控除額の上限を年間4万円から6万円に引き上げることを来年決めるほか、来年から引き下げ予定だった住宅ローン減税の借入限度額を1年間維持する。
防衛財源の確保に向けた法人税、たばこ税、所得税の増税については、開始時期の決定を昨年に続き見送った。増税は26年以降となる見通し。大綱には「適当な時期に必要な法制上の措置を講ずる」と記した。たばこ増税では、税負担が紙巻きより軽い加熱式を優先し、防衛財源に充てる。
企業向け減税は、賃上げに積極的な企業の税負担を軽減する「賃上げ促進税制」を拡充し、赤字などで納税していない中小企業が賃上げした場合に税額控除分を5年間繰り越せるようにする。
半導体など経済安全保障上の重要物資の生産・販売量に応じて減税措置を講じる「戦略分野国内生産促進税制」、国内で研究開発した知的財産の売却所得に対する課税を軽減する「イノベーションボックス税制」も創設する。
◇来年度与党税制改正大綱の骨子
一、定額減税、年収2000万円超は対象外
一、高校生扶養控除の縮小方針、来年に結論
一、生命保険料控除、住宅ローン減税で子育て世帯支援
一、防衛増税、開始時期の決定見送り
一、賃上げ促進税制を大幅拡充
一、半導体など重要物資の生産支援税制を創設
一、知的財産の売却所得への課税を軽減
(了)
(記事提供元=時事通信社)
(2023/12/14-17:44)