「ウナギは病気に弱いことから、薬剤を投与しないと首尾よく成長できない。(略)そこでさまざまな治療薬や予防薬の出番となるが、これが逆にウナギの養殖池あるいはハウス養殖池を汚し、別の病気を発生させる悪循環を呼んでいる。池やハウス養殖池をある程度は浄化させようと浄化剤を投入するので、池の水は深い緑色に淀む第二次汚染が生じやすい。(略)こんどはウナギ自身も汚染されるという結末を迎える。ウナギという動物は、いつも透明な水を求めるわけではないが、池の水がある程度きれいでないと病気になり、細菌を繁殖させる温床ともなる」
さらにウナギの飼料にも問題がある。中国では規制により、許可された原料以外は飼料に用いることができない仕組みになっているという。しかし、その原料の中に「およそ問題だと指摘されるほとんどの危険因子が入っている」というのだ。
「具体的には、カビ菌毒素、酸化酸敗物、残留農薬、石油、炭化水素、重金属の水銀、ヒ素、ナマリ、亜ナマリ、カドミウムなどだ。(略)ウナギに蓄積されやすい重金属を調べた中国の資料によれば、順に水銀、銅、カドミウムで、蓄積しやすい部位は血よりも魚肉部分、魚肉部分よりも頭のホホの部分、そしてもっとも蓄積しやすい部位が肝だという。日本人が好きなウナギの肝は、本当は危ない部位なのである」(同書)
日本に輸出されるウナギは一般に厳重な管理の下で養殖され、安全検査が行われているとされるが、週刊誌「AERA」(朝日新聞出版/2013年9月9日号)が行った日本の外食店におけるウナギ重金属汚染調査の結果を見ると、カドミウム、水銀などがほとんどの検査個体から検出され、特に肝汁からは高度の重金属が検出されたという。
重金属の蓄積は、精神状態の変化(うつ、集中力低下、記憶力低下)やアレルギー症状、慢性疲労などの原因になり、免疫力の低下により白血病の恐れもあるのだという。
スタミナを養うためのウナギのはずが、重金属が蓄積されたウナギを食べているのかもしれない。
(文=松井克明/CFP)