イベリコ豚というと、あなたは何を思い浮かべますか?
イベリア半島固有の畜種、どんぐりを食べている、香りに特徴がある、高級である……そういったイメージを持っている人も多いのではないでしょうか。
『イベリコ豚を買いに』(野地秩嘉/著、小学館/刊)は、そんなイベリコ豚をめぐるノンフィクション。イベリコ豚に魅せられた著者がはるばるスペインに行き、さまざまな経緯を経てイベリコ豚を購入、自らハムを開発して商品化するという経緯が、丹念につづられています。
ここでは本書から、意外に思うかもしれないイベリコ豚にまつわるトリビア(豆知識)を2つ紹介したいと思います。
どんぐりを食べて育つイベリコ豚はほんの一握り
イベリコ豚というと、やはり「どんぐりを食べている」というイメージが強いのではないでしょうか。
でも、実は、どんぐり(樫の木の実)を食べて育つイベリコ豚は、全体の10パーセントほど。「ベジョータ(bellota=スペイン語で「どんぐり」)」と呼ばれるものだけが、最高級のイベリコ豚なのです。
ベジョータは日本ではごくわずかしか流通しておらず、日本で「ベジョータ」の生ハムを購入しようとすると、なんと、100グラムで約5000円。
日本に輸入されるイベリコ豚の多くは、「セボ」と呼ばれる、どんぐりを飼料としないものなのだそうです。
イベリコ豚の安売りセール品は……
今や、イベリコ豚と名のつく豚は、デパートやスーパー、さまざまな飲食店で目にします。
なかには、安い値段で売っているイベリコ豚もありますが、こういった安売りセール品のイベリコ豚ははたして本物なのでしょうか?
答えは、「本物」。ただし、どんぐりを食べて育った、最高級のイベリコ豚「ベジョータ」ではありません。日本ではどんぐりを食べて育った豚がイベリコ豚だというイメージが強いのですが、「セボ」と呼ばれる、普通の飼料を食べて育ったイベリコ豚も存在します。
本書によると、日本に来ているイベリコ豚のほとんどは「セボ」。たとえ「ベジョータ」であったとしても、生ハムや精肉のステーキでなければ分からず、メンチカツや角煮にしてしまうと、食べて区別することは難しいのだそうです。
イベリコ豚について、知っているようで知らなかったという人も多いのではないでしょうか。
本書では、イベリコ豚について、その起源から食品流通に至るまで、ノンフィクションの形で詳細に述べられています。食にまつわる知的好奇心を満たしてくれる極上の一冊と言えそうです。
(新刊JP編集部)
※本記事は、「新刊JP」より提供されたものです。