イケメン玉木宏は、なぜ“惜しくてダサい”立ち位置を抜け出せない?
「ただ、君を愛してる」』
(角川メディアハウス)
主要なテレビ番組はほぼすべて視聴し、「週刊新潮」などに連載を持つライター・イラストレーターの吉田潮氏が、忙しいビジネスパーソンのために、観るべきテレビ番組とその“楽しみ方”をお伝えします。
俳優の玉木宏が、なんだかいろいろな意味で「惜しい」。
甘いマスクに抜群のスタイル。「昭和のハンサム」要素と「平成のイケメン」要素を“いいとこどり”した、贅沢仕様の二枚目俳優である。時代劇に出れば、あまりの美しさにちょっくら浮いてしまうし、ラブストーリーでも「性格が悪ければ悪い」ほどハマリ役になってしまう。役者として得なんだか損なんだかよくわからない立ち位置である。
玉木に関しては、ずっと前から思っていたことがある。とにかくCMに恵まれない。いや、数々のCMに出ているのでイメージ的には企業ウケしているし、一般ウケもいいはず。が、出るCM、出るCM、いちいち「ダサい」印象が強いのだ。
私の記憶でいえば、始まりは永谷園。マツタケのお吸い物を貧乏くさいアレンジで食べる玉木。顔は麗しいのに、なんだかあか抜けない。ラーメン食ったり、茶漬け食ったりと大忙しなんだが、どうもダサいのである。
そして、クロレッツ(日本クラフトフーズ)。息さわやか長持ちをアピールするのだが、前提として視聴者の頭にこびりつくのは「口臭がある」点だ。「こんなにキレイな顔でも口がクサイのね」と、勝手なマイナスイメージを植え付けてしまう。二枚目俳優としてはサブリミナルなダメージが大きいと思う。
ちょっと前には、ノンシリコンのシャンプーで上半身裸にチャレンジしていた玉木。女の髪の残り香をいとおしむ、みたいな役回りだったのだけれど、色気よりも「ニオイフェチ」的な要素が強くて、素敵さよりも滑稽味のほうが強く押し出されていたような気がする。あまりに顔が美しすぎると、浮世離れしちゃうんだよなぁ。香りよりも、設定のくささがニオってしまい、韓流っぽさも漂う。
で、先日、玉木の新境地とも言えるCMを発見した。炭酸水のゲロルシュタイナーで、ドイツ生まれの天然炭酸水(硬水)が売りである。玉木は新しく会社に入ってきたニューフェイスで、ドイツ生まれのゲロルシュタイナーさんという設定だ。会社の女性たちとの飲み会で質問攻めにあう玉木。「ゲロルシュタイナーさんって天然なんですよね~」「自然体っていいですよね~」などとモテモテ。ここまではいい。「しかも硬水なんですよね~」と女子社員に聞かれて、「うん、かなり硬いよ」と自慢げな玉木。シモネタかよッ!! と愕然とした。
もう、玉木は行くところまで行った気がする。二度と戻れない境界線を越えたというか、結界からはみ出したというか。かっちょいいCM、オシャレなCMとは金輪際無縁と断言してもいい。心のどこかで玉木がオサレCMに巡り合えますようにと、うっすら期待していたのだけれど、もうないな。オサレCMはオダギリジョーとか井浦新、綾野剛に譲って、玉木は玉木で突き進んでいくのね。
そのうち、紳士服のCMで微妙なロボットダンスを踊り出したり、トイレや風呂の洗剤で黄ばみやカビと闘い出したりするのだろう。
(文=吉田潮/ライター・イラストレーター)