交通事故に遭った人のうち、自転車に乗っていて亡くなった人の割合は13.1%、けがをした人は15.2%です。さらに言うと、東京都内では、その割合はそれぞれ22.1%と28.1%で、自転車事故が占める割合は大変高いのが特徴的です。
このような自転車事故の増加を受けて、6月1日から自転車に関する法律が変わります。
これからは、14歳以上の人が自転車で危険な行為を行い、3年以内に2回以上違反すると、自転車運転者講習の受講が義務付けられます。
この「危険な行為」は14項目あり、その内容と運転ルールをご紹介します。
(1)信号無視:信号は守る
(2)遮断機が下りた踏切への立ち入り:遮断機が下りた踏切に入らない
(3)一時停止指定場所での不停止:一時停止の「止まれ」の標識がある場所では、一旦止まって地面に足をつけ、安全を確認する
(4)歩道通行時の交通法違反:歩道では歩行者優先で、車道寄りを走る
(5)ブレーキ不良自転車:ブレーキがない自転車や効きが悪い自転車は整備をする
(6)酒酔い運転:飲んだら乗らない
(7)一方通行などの通行禁止違反:「自転車は除く」との表示がない一方通行路には進入しない
(8)歩行者専用帯での徐行違反:歩道を運転する場合は、スピードを落として乗る
(9)通行区分違反:道路の左側を走る
(10)路側帯での歩行者の通行妨害:歩道がない路側帯を走るとき、歩行者の邪魔をしない
(11)交差点での安全進行義務違反:交差点では、特に車や歩行者に注意して運転をする
(12)交差点での優先車妨害:道路標識を確認し、優先道路を走る車両を優先する
(13)環状交差点での安全進行義務違反:道路が円形になった環状交差点では、周囲の車や歩行者に注意をして運転する
(14)安全運転義務違反:傘さし運転や二人乗り、携帯電話で話をしながら、イヤホンで音楽を聴きながらの運転はやめる
信号無視や、携帯電話使用などの「ながら運転」は、自動車を運転している際には当然しないけれど、自転車の場合はついしていませんか。また、朝夕に歩道を猛スピードで駆け抜ける自転車も、よく見かける光景です。
このような「日頃よく見る危険行為」で警察官に切符を切られ、それが3年間で2回重なると、自転車運転者講習が待っているのです。講習は3時間に及び、講習料として5700円の費用もかかります。
捕まるから気を付けるというのは間違っていると思いますが、この法律の改正がきっかけとなって危険行為が減るのなら、世の中の安全・安心が増すことになりますから、よい傾向といえるでしょうか。自転車事故が増えている時代だからこそ、安全運転を意識して、加害者となるリスクを避けるように行動しましょう。
個人賠償責任保険加入は必須
そして、自転車に乗るなら「個人賠償責任保険」に必ず加入するべきです。個人賠償責任保険とは、他人にケガをさせたり他人のモノを壊した時に、法律上の賠償責任を補ってくれる保険です。単独では加入できず、火災保険や自動車保険、共済や傷害保険、自転車保険などの特約で加入します。
最近は自転車保険の認知度が上がったことで加入する人が増えていますが、もしも事故に遭った場合に、「相手への治療費や壊したモノの補償」だけが必要という人には、個人賠償責任保険で十分です。
筆者のもとへ家計相談にいらっしゃる方から、「自転車保険に入ったほうがいいですか」と質問されることがありますが、保険証券を確認すると、すでに個人賠償責任保険に加入されているケースがよくあります。火災保険や自動車保険、共済などですでに加入しているのに、ご本人がそれを知らないのです。
個人賠償責任保険の補償額は上限1億円が主流で、年間保険料は1000~3000円程度。一家の誰か1人が個人賠償責任保険に加入していれば、同居の家族はもちろん、仕送りしている子どもも含めて家族全員が補償されるため、個人賠償責任保険は一家に一証券で事足ります。
自転車保険は、この個人賠償責任保険に上乗せして、「自分がケガをした時の補償や自分の自転車を修理するための補償が欲しい」という人向けの商品です。自分に対する補償がいらない人は、個人賠償責任保険だけで十分です。
内容を十分に把握しないままに加入するのではなく、自分にとって必要な補償を備えつつ、自転車の安全な運転について今一度見直しましょう。毎日の自転車ライフを安全に、そして快適に送ってください。
(文=前野彩/ファイナンシャルプランナー)