洗顔料「DOVE」を即完売させた限定パッケージの秘密

最先端技術有機ELとのコラボ

「一昨年より、コニカミノルタの有機ELのブランディングを手掛けており、どのようなツールがもっとも有機ELの機能性を訴求することができるかと探求していました。カリグラフィーの文字を読ませることによって有機ELの光の機能性を引き出し、メーカーの人にも、文字と光の相性の良さを実感、認識してもらい、未来の光についての可能性を示すことができました」（同）

　有機ELとは、有機化合物に電圧を加えることで、熱をほとんど出さずに発光する現象をいい、多くのメーカーが家電や電子ペーパーなどに応用し、未来の明かりとして可能性が期待される最先端技術である。

　18年12月に行われたインテリア25団体が集まる史上初のイベント「IDM TOKYO 2018」では、文字と光の5作品と映像を発表し、デザインアワードで優秀賞を受賞した。雲野氏のブランディング力は、デザイン業界のみならず異業種からも一目置かれる存在となっている。雲野氏は現在、有機ELや特殊印刷などの先端技術や日本の伝統技術を、空間デザイン、ファッション、製品にするプロジェクトを進行中だ。近い将来、街のいたる所でフラウムの手掛ける有機ELをはじめとした、さまざまなアートカリグラフィーを目にすることになるだろう。

日本にアートを根付かせる

　雲野氏はデザイン事務所を構え、空間デザインや設計を手掛ける父のもとで、学生の頃から図面を書いたり現場の手伝いをしており、多くの経験を積んだ。早くからプロの現場で、デザインやアートに触れたことが、現在の雲野氏の活躍のベースとなっているのかもしれない。そんな雲野氏は、デザイン教育の普及にも力を入れている。雲野氏が所属する「JCD 日本商環境デザイン協会、Soda（Seed of design award）委員会」では、子供たちがアートに触れるイベントなども積極的に行っている。

「小学生のワークショップなどを行っています。デザインを通して子供たちの自主性を育むことは非常に有意義で、ワークショップの前と後では子供たちの目の輝きが変わりますし、発言も活発になり、デザインに触れることで心を開いていくのがわかります」（同）

　諸外国に比べてアートが根付きにくいといわれる日本において、日本人が能動的にアートを楽しむレベルまで生活に浸透するのは、まだ少し時間を要するだろう。これは、アーティスト側からも発信する努力がなくては、状況は変わらないのかもしれない。これからは、雲野氏のようなブランディング力、発信力がアーティストにも問われるようになるだろう。日本のアートのあり方を変えるかもしないデザインユニット、フラウムのこれからの活動に期待したい。
（文＝道明寺美清／ライター）