ポスト五輪の東京~2020年以降も勝つまち、負けるまち~ポスト五輪を待ち受ける23区の勝ち目、弱り目

東京・新宿区と渋谷区で“子どもが増えている”…「東京=低出生率」の終焉か

 ただし、同区では、中野駅の南北両側で住宅を含む複合型再開発が新たに動き出した。「四季の都市」が生んだタマツキ効果といえるだろう。渋谷区や豊島区でも、シンボリックな再開発でまちが変わると次々に新たな変化が生まれてくるという、まち再編のタマツキが進み始めている。

 副都心区の中で、16~19年に幼児人口が一番増えたのは新宿区。山手線の内側で、特にその傾向が強い。中野区はもとより、渋谷区も豊島区も山手線の内側に位置するのは3割程度。これに対して、新宿区は6割以上が山手線内にある。

 中央区で一番人口が増えているのは湾岸エリアではなく、日本橋地区。千代田区では、ブランド力の高い麹町地区よりも神田地区のほうが人口増加率が高い。これと同じような、地の利を生かした小さな地区更新の動きが新宿区に広がり始めたのだろう。こちらはタマツキではなく個の積み重ねだが、四谷や飯田橋の再開発によって、「新宿居住」が注目されるようになると、個の動きが加速化するという、これまたタマツキが期待できてくる。

東京23区の出生率は全国平均並みになる?

 いずれにせよ、副都心区でファミリー層が増え、子どもが増えていることはまぎれもない事実だ。前述した通り、副都心区の出生率は23区の中で相対的な低位にあるが、その絶対数は近年、全国平均値を大きく上回るペースで上昇を示している。

 かつて、都心区と副都心区の低出生率が東京の出生率全体を押し下げていたが、今や都心区は全国平均並みとなり、副都心区でも急速な改善が進みつつある。早晩、23区の出生率が全国平均と肩を並べる日が訪れそうな勢いだ。もちろん、それは若いファミリー層の奪い合いの結果にすぎず、我が国の少子化問題の解決が進んだわけではない。全国平均並みといっても、人口が減らないために必要なボーダーライン(人口置換水準、我が国ではおおむね2.1)と比べると、まだ絶望的に低い。

 しかし、少なくとも、「東京は出生率が低い」という単純な発想から脱却すべきときが来たことは間違いなさそうだ。

池田利道/東京23区研究所所長

東京大学都市工学科大学院修士修了。(財)東京都政調査会で東京の都市計画に携わった後、㈱マイカル総合研究所主席研究員として商業主導型まちづくりの企画・事業化に従事。その後、まちづくりコンサルタント会社の主宰を経て現職。
一般社団法人 東京23区研究所

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