ポスト五輪の東京~2020年以降も勝つまち、負けるまち~ポスト五輪を待ち受ける23区の勝ち目、弱り目

東京23区、「勝ち組」「負け組」のえげつない現実…「西日本に若い女性が多い」にヒント

 これに対して、交通の便に難があり、地価も高い西部山の手地区はハードルが高い。だが、逆転の芽はある。たとえば、この地にしっかりと根を張っている、個を重視しつつゆるやかに連携するという「山の手型コミュニティ」の再評価。これをテコに、コミュニティビジネスなどを核とした新たな魅力ネットワークをつくり出していけば、山の手人気復活も決して夢ではない。

東京の不戦勝を許した地方の努力不足

 社人研推計で「勝ち組」とされた区も、「負け組」とされた区も、それぞれがその個性を生かした戦略的なまちづくりに取り組めば、東京の活力は維持されていく。しかし、それだけでは東京の悩みは解決しない。各区が努力すればするほど、「東京ひとり勝ち」が進み、東京と地方との正常な関係への改善が遠のくという、皮肉な結果すら招きかねない。

 これを回避する唯一の方策は、地方が正当にがんばることしかない。不戦勝を許した責任は、不戦敗したほうにあるからだ。

 遅々として進みそうにない地方創生の動きの評価は本稿の対象から逸脱するが、目先の課題に目を奪われ、枝葉ともいうべき方法論に埋没しているようでは、効果は自ずと限定的だ。しかも、その内容が「成功事例に学べ」「隣まちに遅れを取るな」の果てに金太郎飴状態に陥ってしまうと、なおさら期待は薄くなる。

 15年ほど前、国も地方もこぞって騒ぎ立てた中心市街地活性化という言葉を、最近トンと耳にしなくなった。その一方で、地方だけでなく大都市の郊外部でも、シャッター通り化はとどまることなく進み続けている。同じ過ちが繰り返されないとは言い切れない。

カープ女子が日本を救う?

 では、どうすればいいのか。ひとつ問題提起をしたい。

 図表2は、47都道府県の出生率ヒストグラム(度数分布図)を東日本と西日本別に示したものだ。「西高東低」の傾向が一目瞭然だろう。

 西日本の出生率が高いのは、若い女性が多いから。20~40代前半のいわゆる「結婚・出産適齢期」の性比は、東西日本で真っ二つに分かれている(図表3)。

 しかし、これだけではまだ50点。なぜ、西日本は若い女性が多いのだろうか。 17歳までは東西日本で差がなかった性比は、西日本で18歳~20代前半にかけて急減し、20代後半になると動きが収まる(図表4)。

 グラフには記していないが、30~40代前半も20代後半と大差なく推移する。その理由は、事実上ひとつしか考えられない。西日本では進学、就職の時期に女性が地元に残る傾向が強いということだ。

池田利道/東京23区研究所所長

東京大学都市工学科大学院修士修了。(財)東京都政調査会で東京の都市計画に携わった後、㈱マイカル総合研究所主席研究員として商業主導型まちづくりの企画・事業化に従事。その後、まちづくりコンサルタント会社の主宰を経て現職。
一般社団法人 東京23区研究所

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