
少し前に、友達のお母さんがつくったおにぎりを食べられない子がいるという話を聞き、かなり驚いたものでしたが、先日、友人から聞いた話によると、今はそれどころではなく、自分の母親がつくったおにぎりさえも食べられない子がいるようです。それはどういうことなのかと、首をひねるばかりです。たとえば、親が神経質に、食べものに付着している菌を気にして「あれは汚い」「これもだめ」と、幼い時から言い続けていたといった事情があるのかもしれません。もちろん、不潔な手でおにぎりを握ったり料理をしたりするのはいけませんが、普通に手を洗っていれば大丈夫です。
最近は、やたらと抗菌、除菌とうるさくいう風潮があるので、消費者にもおかしな“常識”が植え付けられてしまったのかもしれません。
ぬか漬けセミナーを開催してみてわかったのですが、漬物には、つくった人の常在菌が混じります。そして、その常在菌のわずかな違いによって、数日後には、同じように仕込んだぬか漬けが、それぞれ全然違う味になっていたりします。そこがおもしろいし、それぞれのおいしさがあるということもわかります。もしかしたら、母親のおにぎりが食べられない子は、母親がつくるぬか漬けも食べられないのかもしれません。
しかし、筆者がもっと驚いたのは、そういう子供も、コンビニエンスストアで買ったおにぎりは食べられるというのです。何か大事な“尺度”みたいなものが狂っているのではないかと思ってしまいます。
筆者はたった一度だけ、コンビニのおにぎりを食べたことがあります。あれは、河口湖畔で迎えた朝のことでした。薬くさくて、ふた口ほど食べて、ギブアップした覚えがあります。
それもそのはず、コンビニのおにぎりには大量の食品添加物が使用されています。なかでも保存料や着色料は、相当の量が入っていると思わなければなりません。製造してから、配送されコンビニの店頭に並ぶまでの時間もかなりありますし、そのままコンビニの棚に並べられて、お客さんが手にして家かオフィスに戻り、それでもすぐに食べるかどうかわからないとなると、売るほうはかなり神経質にならざるを得ません。
もし、食品事故などを起こそうものなら、糾弾され、罵倒され、下手をすると企業としての存続すら危ぶまれるような状況にならないとも限りません。そのため、製造販売側としては最大限、安全性に配慮したかたちでつくり、売るしかないのです。大量の食品添加物を使うことで、そのリスクを回避できるのですから、使って当たり前ということになるのでしょう。
しかし消費者のなかには、保存料や着色料の安全性に疑問を抱き、自主的にそのような食品添加物を含んだ商品を買わないようにしようという動きもあります。それを受けるように、メーカー側は保存料や着色料を使用していないコンビニおにぎりをつくるようになりました。