「塩抜き食」は命の危険!内臓機能低下も…摂取量多いほど死亡率低い?
塩分は血圧を上昇させ、脳卒中の原因になる。そこで、減塩運動が展開されてからもう60年近くになる。
米国の医学者L.K.ダールが1950年代に日本を訪問し、鹿児島から青森までの1人当たりの食塩摂取量と高血圧や脳卒中(出血)の関係を調べた。その結果、当時1人1日平均約14グラムの塩分を摂取していた鹿児島の人たちに比べ、約28グラムを摂取していた秋田や青森の人たちの高血圧や脳卒中の罹患率が格段に高く、塩分=「高血圧・脳卒中の原因」という図式が確立された。これを受け青森・秋田から減塩運動が始まり、全国に広がっていき、今では「1日の塩分摂取量は10グラム未満が望ましい」とされている。
昔の味噌汁、醤油、つけ物、梅干しなどの塩辛い味に慣れている我々、団塊世代にとって、減塩のこれら食品などまったくおいしくない。
そもそも塩は、人類最古の調味料であり、生命にとって一番大切な栄養素であったからこそ、塩を交易する場所に「塩川」「塩島」「塩谷」「塩原」など「塩」に因んだ地名がつけられた。西洋にも、
・ソルトコーツ(Saltcoats)…スコットランド
・ザルツブルク(Salzburg)…オーストリア
・ザルツギッター(Salzgitter)…ドイツ(salz=ドイツ語で「塩」)
という地名がある。
古代ローマ時代から、食物の価値は「おいしいか、どうか」で決まり、「おいしいものこそ、健康によい」と考えられていた。「塩こそ、最高の健康食」と考えられていたので、塩(sal=ラテン語)から「健康」を意味する「salus」という言葉がつくられた。生野菜には塩をかけて食べていたので、salad(サラダ)という。
生命の先祖は、約30億年前に海で誕生したアメーバ状の単細胞生物である。それが分化、分裂、増殖して、多細胞生物に進化し、その頂点に哺乳類のヒトが立っている。
塩の効能
「海水」と「血液」や「羊水」の浸透圧は酷似している。血液のことを「血潮」ともいう。人体を構成する60兆個の細胞は今でも、「血液という海の中に浮遊して生きている」と言っても過言ではない。
昔、炭鉱夫が地下の蒸し暑い坑内でツルハシを使って作業するとき、あまりに大量の発汗で体内の塩分が喪失し痙攣を起こして死ぬ者が続出する、という事故が多発した。その後、鉱夫に塩をなめながら労働させると、そうした事故がなくなったという。