今、海外セレブやモデルの間で「ジュースクレンズ」というダイエット法が流行しているという。これは「コールドプレス製法」という、素材の栄養素やうまみを壊さずにつくられた、野菜や果物のジュースを食事代わりにするものだ。
このジュースクレンズは、ダイエットのみならずデトックスの効果もあるということで、女性を中心に注目を集めている。消化の負担が少ないジュースを摂ることで胃腸を休ませ、体内の毒素を排出する効果があるようだ。
実践者の中には、「肌がきれいになった」「むくみや冷え性が改善された」という声もあり、手軽な健康および美容法としてブームの兆しを見せている。
しかし、この方法には問題や危険はないのだろうか? 管理栄養士でフードコーディネーターの豊田美里氏に聞いた。
「野菜や果物のみの食生活になることについては、慎重であるべきです。海外の女優やセレブが『菜食でやせた』という情報をうのみにして真似するのは、大変危険です。女優やセレブの方々は、栄養士など専門家の指導を受けている場合が大半です。自己流の菜食は、栄養失調を招きかねません。
『3大栄養素』といわれるたんぱく質、炭水化物、脂質が不足すると、生命維持に重大な影響を及ぼします。ジュースクレンズを行う場合、『3日以内でやめるように』という指導がなされていますが、それ以上続けると大変危険でしょう。
また、食生活が急激に変わると胃腸にかかる負担が大きく、思わぬ病気を引き起こす可能性もあります。ジュースクレンズを行う場合は『準備食』と『回復食』まで含めた食事計画をつくらなければなりません」(豊田氏)
太りやすい体質になり、体の老化が早まる恐れも
自己判断で安易にジュースクレンズを行うことは、健康になるどころか、病気リスクを増やす要因にもなりかねないようだ。そもそも、特定の食品に偏った食生活を送ることについて、豊田氏は以下のように警鐘を鳴らす。
「ジュースクレンズは、『酵素』を体に取り入れることで体内をきれいにするという考え方です。確かに酵素は重要であり、現代人は不足しがちともいわれています。
しかし、3大栄養素をはじめ、ビタミン、ミネラル、食物繊維、ファイトケミカル、水と同じく、酵素は体にとって重要な栄養素のひとつでしかなく、不足しているからといって、酵素だけ摂取すればいいというものではありません。ほかの栄養素も摂りながら、酵素を補う食事をするべきです。
また、炭水化物やたんぱく質などの必須栄養素を制限するダイエットは、簡単に体重を落とすことができますが、リバウンドの可能性が高いばかりか、健康を害する恐れもあります。
炭水化物が不足すると、体は脂肪を蓄えようとすることがわかっており、かえって脂肪がつきやすい体質になるため、ダイエットをやめた途端に太る可能性が高まるのです。さらに、たんぱく質が不足すると、筋肉量が落ちて体の老化が早まる上、基礎代謝量が低下してエネルギーを消化しづらくなります」(同)
素人判断では危険なジュースクレンズ
ダイエット目的で始めるジュースクレンズで、逆に太りやすい体質になる可能性があるというのは、なんとも皮肉だが、実際ジュースクレンズにダイエットやデトックスの効果は認められるのだろうか?
「一時的にはやせるでしょうし、デトックス効果もあるといえます。しかし、前述したように、リバウンドや体の老化などのリスクも同時にあります。ジュースクレンズを行う場合は、必ず専門家の指導を仰ぐことをおすすめします。
しかし、ジュースクレンズを行った後に暴飲暴食の食生活に戻ってしまっては、まったく意味がありません。極端な食事をするのではなく、普段の食事の中に野菜や果物による酵素を取り入れるべきでしょう」(同)
健康は一朝一夕で手に入るものではなく、日々の積み重ねの賜物であるということだ。極端な食生活や妄信的なダイエットは、体を壊す結果にもつながりかねない。
(文=編集部)