なぜバッグ購入より旅行のほうが満足度高い?モノ購入の幸福度が経験購入より低い理由
これは、自分の行った購買について考える機会を増やします。分析結果からは、マテリアル購買のほうが経験的購買よりも購買時に迷いが生じやすく、購買後も自分の選択が正しかったかどうか、あるいは他の商品を買ったほうが良かったのだろうかなどと考えることが多いこと、そして、それが満足度と幸福度を下げることが確認されています。
言い換えると、経験的購買のほうがマテリアル購買よりも幸福度が高くなるのは、購買時も購買後も類似品との比較があまり行われないからなのです。経験的購買の場合、たとえば自分が選んだパッケージツアーよりももっといいツアーがほかに存在する可能性が考えられたとしても、自分の基準を満たしていれば十分に楽しめます。また、経験的購買では経験時の状況、例えば予想外の出来事などのエピソードも経験に含まれるため、同じものは存在しません。消費後は記憶に残るだけとなり、比較が継続することはありません。
(3)人間関係の促進
3つめの理由としては、経験的購買のほうがマテリアル購買よりも人間関係を促進しやすいことが挙げられます【註1】。経験的購買はマテリアル購買よりも他の人と一緒に行う活動が多くなります。また、一般に、物質主義志向の人々にはネガティブなステレオタイプ、経験主義志向の人にはポジティブなステレオタイプが形成される傾向にあり、印象にも影響を与えます。
初対面の人と経験的購買、あるいはマテリアル購買について会話をしてもらい、その後に会話した相手について評価してもらったところ、経験的購買について話した相手のほうがよりポジティブな印象が形成され、友人になりたい、会話を楽しんだなどの評価が高くなったことが報告されています。経験的購買は、より良い人間関係を築くきっかけとなる可能性があります。
以上のことから、のちのちの満足度や後悔の少なさ、そしてより永続的な幸福感を考えるのであれば、マテリアル購買よりも経験的購買を選択したほうがよいということになります。ボーナスを海外旅行と高級ブランドのバッグのどちらに使うかといった2タイプの購買間での意思決定場面に遭遇し、悩むことがあった場合には、こうした点を考慮し、海外旅行を選ばれるといいかもしれません。