今回は、からだが「乾いて、縮んで、歪む」老化という普遍変化についてもう少し理解を深めたい。
老化研究では、最大歩行速度と通常歩行速度という2つの種類の歩行速度をよく測定する。これらは下肢筋力のレベルを測定するものだが、重要なのはこの2つの速度の間にどの程度の違い(最大歩行速度から通常歩行速度を差し引いた値)があるかである。
この差は下肢筋力の予備力(余力)を表している。老化のレベルは瞬発力や持続力にも反映されるが、まずは予備力に鋭敏に現れる。単に筋力の最大値を測定しその優劣を評価しても、微細な老化の進行レベルを測定することはできない。運動スキルや若い頃の筋力の鍛錬度でいくらでも差がついてしまうからである。
老化が体感できない30歳くらいから、少しずつではあるが着実に予備力は低下し始めるため、老化のモニターは可能だ。老化の進行に伴い最大歩行速度と通常歩行速度の差は次第に縮まってゆく。そして老化が許容限界値に近づくと、この2つの歩行速度は最終的には同じ値になってしまう。その結果、危険回避能力が完全に失われることになる。
最近、交差点で青信号が点滅しているにもかかわらずゆっくり悠然と歩いているシニアを見かけたことはないだろうか。当の本人は一生懸命歩いていると思ったほうがいい。最大歩行速度と通常歩行速度が同値になってしまった老化の怖さを見ているのに等しい。
老化のわずかな進み具合を察知し、対策が打てるかどうかで人生のセカンドステージは様変わりしてしまう。老化をモニターしながら進む速度を遅らせる手立てを早くから実践すれば、かなり制御しやすくなるからである。このベストエイジが40歳ごろである。40歳代は、仕事も忙しく、家庭の運営も大変だ。健康面でも生活習慣病の予防管理ばかりに目を向けがちだし、巷の世相もそれ一色だ。
しかし、筆者は40歳代からのシニア期に向けた老化対策を薦めている。長く老化研究を続けてきて、老化が明瞭化する70歳代でも老化を遅らせることが可能なことはわかったが、より若い頃から“老化耐性”を高める手立てがより有効と確信するに至った。
老化をモニターするための簡単なチェックポイント
そこで40歳代から老化をモニターするための2つの簡単なチェックポイントを紹介しよう。