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安保徹「間違いやすい医学の常識」

脳、子供時代に完成で成長終了?「細胞分裂」が人間の病気と老化を支配

文=安保徹/新潟大学名誉教授、医学博士
脳、子供時代に完成で成長終了?「細胞分裂」が人間の病気と老化を支配の画像1「Thinkstock」より

 動物は食べ物から栄養素を得たりエネルギーを取り出していますが、人間も同様です。毎日食事をすることによって生きることが可能になっています。食べ物から取り出したエネルギーは活動に使われ、代謝系を働かせるためにも使われています。

 人間は食べ物からエネルギーを取り出す際、2つの異なる方法を使っています。ひとつは無酸素下で行う解糖系です。2つ目は、有酸素下で行うミトコンドリア系です。ひとつの生き物なのに2つの方法を使っているという点が重要です。

 私たちは真核生物であり、今から12億年前に無酸素下で生きる解糖系生命体に有酸素下で生きるミトコンドリア系生命体が寄生して誕生しています。この名残りで、2つのエネルギー生成系を持っているわけです。ミトコンドリアが安定して共生するために、2つのことが起こりました。ひとつ目は、解糖系生命体がブドウ糖からつくり出した乳酸をミトコンドリアがエサにしたということです。2つ目は、自分が希釈されてしまわないように分裂抑制遺伝子を持ち込んだことです。

 解糖系はエネルギー効率が悪く、ミトコンドリア系はエネルギー効率がいいのが特徴です。18倍のエネルギー効率の差があります。このような事情から、多くの研究者は真核生物の生きるためのエネルギーのほとんどすべては好気的ミトコンドリアに依存していると考えてきました。実際、私たちは呼吸が止まれば死んでしまいます。ミトコンドリアの多い脳神経細胞や心筋細胞が死滅してしまうからです。

 しかし、解糖系でつくるエネルギーも欠くことができないことがわかりました。細胞分裂のエネルギーは解糖系に依存しているからです。ミトコンドリアの少ない細胞が解糖系を使って分裂しています。具体的には、皮膚細胞、腸管上皮細胞、骨髄細胞、男性の精子細胞などです。

子供の皮膚がみずみずしい理由

 逆に、ミトコンドリア系でつくるエネルギーは細胞分裂の抑制に使われています。ミトコンドリアの多い細胞は分裂ができないのです。多くは子供時代に分裂が終わって、あとは一生大事に使い続ける細胞です。これに属する細胞が、脳神経細胞、心筋細胞、骨格筋のうちの赤筋細胞です。再生できないのでダメージを受けた時は大変です。それが、脳梗塞心筋梗塞です。

安保徹/新潟大学名誉教授、医学博士

安保徹/新潟大学名誉教授、医学博士

1947年、青森県生まれ。東北大学医学部卒業。現在、新潟大学大学院医歯学総合研究科教授(国際感染医学講座免疫学・医動物学分野)。米国アラバマ大学 留学中の1980年に「ヒトNK細胞抗原CD57に対するモノクローナル抗体」を作製。89年、胸腺外分化T細胞の存在を発見。96年、白血球の自律神経 支配のメカニズムを初めて解明。国際的な場で精力的に研究結果を発表し続け、免疫学の最前線で活躍
医学博士安保徹 公式サイト

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