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安保徹「間違いやすい医学の常識」

脳、子供時代に完成で成長終了?「細胞分裂」が人間の病気と老化を支配

文=安保徹/新潟大学名誉教授、医学博士

 一方、分裂できる細胞はダメージを受けてもすぐ再生されます。皮膚は傷ついてもふさがり、腸は上皮も破壊されてもいずれ治癒します。これらは解糖系の働きに依存しているわけです。子供の時は解糖系が優位で、大人になると2つの系は調和の時代に入ります。そして、年をとってくるとミトコンドリアが優位になって、この流れで一生が終わります。
 
 細胞分裂は子供時代に盛んで、お年寄りになると低下します。このことを知ると、子供時代に身体が伸びることも皮膚が分裂してみずみずしいのも理解できるでしょう。

 一方、解糖系はエネルギー効率が低いので、たくさん食べる必要があります。子供が午前10時や午後3時におやつを食べる理由になっています。大人は3食で十分です。逆に、お年寄りになると少食が健康の基本になります。このような仕組みも、食べ物からエネルギーを取り出すのに2つの方法があり、これが年齢と共にシフトする現象があるからです。

 ミトコンドリアの多い分裂のない細胞は、たくさん食べることに弱い傾向があります。お年寄りに胃瘻をつくりたくさん栄養を与えると、脳神経がダメージを受け認知症が進みます。
(文=安保徹/新潟大学名誉教授、医学博士)

安保徹/新潟大学名誉教授、医学博士

安保徹/新潟大学名誉教授、医学博士

1947年、青森県生まれ。東北大学医学部卒業。現在、新潟大学大学院医歯学総合研究科教授(国際感染医学講座免疫学・医動物学分野)。米国アラバマ大学 留学中の1980年に「ヒトNK細胞抗原CD57に対するモノクローナル抗体」を作製。89年、胸腺外分化T細胞の存在を発見。96年、白血球の自律神経 支配のメカニズムを初めて解明。国際的な場で精力的に研究結果を発表し続け、免疫学の最前線で活躍
医学博士安保徹 公式サイト

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