サラダ油をはじめ、肉類、大豆製品、ナッツ類、マヨネーズは糖質こそ少ない、もしくは含まないものの、どれも「高リノール酸食品」です。
下の写真は、糖質制限食の夕飯の典型例です。それぞれの料理の<重量、リノール酸量、オメガ3脂肪酸量>を算出しました。
・鶏肉と野菜炒め、サラダ油使用…300g、5.2g、0.7g
・葉野菜のサラダ、マヨネーズ大さじ2…24g、5.6g、1.0g
・冷奴、絹ごし半丁…150g、1.9g、0.3g
・アーモンド…20g、1.3g、0g
・カシューナッツ…20g、1.6g、0.01g
計514g、15.6g、2.01g
厚生労働省発行の「日本人の食事摂取基準2010年版」によると、成人の一日当たりのオメガ6脂肪酸の摂取目安量は9~11g、オメガ3脂肪酸の摂取目標量は2.1g以上とされていますので、この一食だけでそれぞれの必須脂肪酸の量はほぼクリアできています。
しかし、問題は必須脂肪酸の摂取率です。オメガ6脂肪酸:オメガ3脂肪酸の摂取比率は、厚労省は4:1と掲げ、油の研究をしている専門家は1:1を推奨しています。この食事は7.7:1となっており、明らかにリノール酸過剰です。
糖質制限で予防または治療できるとされている糖尿病、花粉症、アトピーなどは、リノール酸の過剰摂取が原因で起こる病気でもあります。ほかにも、リノール酸の過剰摂取は、がん、心筋梗塞、脳卒中、うつ病、認知症などの原因にもなります。
健康のための糖質制限食は病気リスクの大きい高リノール酸食でもあるのです。大勢の方が取り組んでいる糖質制限食には、こんな落とし穴があるのです。
こうしたリノール酸の為害作用(体に害を及ぼすこと)を抑えるのは、オメガ3脂肪酸のDHA、EPA、アルファリノレン酸です。サバ、アジ、サンマ、ブリ、などのDHAやEPAを多く含む魚とエゴマ油、アマニ油などアルファリノレン酸の多い油を意識して摂り、必須脂肪酸バランスを整えることを基本としない糖質制限食は、かえって危険であるといわざるを得ません。
また、糖質制限食に限らず、高温加熱したリノール酸は認知症の原因とされる神経毒ヒドロキシノネナールを発生しますので、製造過程で高温加熱されたリノール酸を多く含むサラダ油やマヨネーズは禁忌としたほうがよいでしょう。
(文=林裕之/植物油研究家、林葉子/知食料理研究家)