数年前から、糖質制限食が広まっています。毎日の食事から糖質を抜くことで糖尿病やメタボリックシンドロームなどの改善や予防ができるといわれています。
筆者も2013年発行の『炭水化物が人類を滅ぼす』(夏井睦/光文社)を読み、常識とされた糖質、脂質、たんぱく質を三大栄養素とした栄養指針の矛盾や、カロリー計算不要の根拠、たんぱく質や脂質だけでも体内で糖分をつくり出す「糖新生」のメカニズムなど、夏井氏が自身の体験を元に展開する糖質不要論に引き込まれワクワクしながら読み進めました。
この本をきっかけに糖質制限食は一気に広まり、糖質ゼロを謳う食品も次々に発売されています。人々の関心が高まっていることは明らかです。
短期間で体形が見違えるように変わる衝撃的なテレビCMでお馴染みのライザップも、厳格な糖質制限食の指導で急激に体重を落とし、運動は体を引き締めるための筋力トレーニングが中心だそうです。
糖質制限食は、文字通り糖質を摂らない食事法ですから、ご飯やパンのほか、うどん、パスタ、ラーメンなどの麺類(十割そばは除く)など、日本人が慣れ親しんでいる主食を断たなければいけません。そのほかにも、イモ類をはじめとした炭水化物、アボカド以外の果物など糖質を含む食品はNGで、砂糖の多い清涼飲料水や菓子類は論外です。
一方、主食代わりのたんぱく質、脂質をメインにビタミン、ミネラルなどは、十分な量を摂らなければいけません。魚、牛、豚、鶏、卵、大豆製品(豆腐、納豆、枝豆)、ナッツ類、キノコ、葉野菜、大根、バター、乳製品などです。調味料は、トマトケチャップは不可ですが、マヨネーズは可。少量の醤油も良いようです。サラダ油やごま油、オリーブオイルなどの植物油もOKとなっています。
こうしてみると、主食がないつらさはありますが、肉や大豆製品、ナッツ、マヨネーズなど、おなかも気持ちも満たされそうな食材も多いので、実践している人が多いのもうなずけます。
糖質制限食の落とし穴
しかし、こうして広まりつつある糖質制限食には大きな落とし穴があります。それは必須脂肪酸のひとつ、リノール酸の過剰摂取の問題です。糖質制限食の食材は高リノール酸が多いのです。本連載で繰り返し訴えているのは、オメガ6脂肪酸(ほとんどがリノール酸)の摂り過ぎと、オメガ3脂肪酸(DHA、EPA、アルファリノレン酸)不足による、必須脂肪酸バランスの崩壊がさまざまな病気の原因となることです。