7月5日、「バター、ラード、赤身肉などに含まれる飽和脂肪酸が早死リスクを上昇させる」という研究結果が、アメリカの医学誌「JAMAインターナル・メディシン」に発表された。
これは、医療従事者を対象に最長32年間にわたって、食事、生活スタイル、健康などに関するアンケート調査を実施したもので、調査対象者は12万人以上におよぶという。
今回の研究では、飽和脂肪酸やトランス脂肪酸をより多く摂取している人ほど、同量のカロリーを炭水化物から摂取している人にくらべて死亡率が高くなることがわかった。また、バター、ラード、赤身肉に含まれる飽和脂肪酸を、オリーブオイルや菜種油、大豆油などの植物性食品の不飽和脂肪酸に切り替えることで「健康上の大きな恩恵」を得られるという。
具体的には、「トランス脂肪酸の摂取量が2%増加」と「早死リスクが16%高まる」の関連性が明らかになったほか、飽和脂肪酸については「摂取量が5%増加」と「死亡リスクが8%高まる」に関連性が見られたという。一方で、不飽和脂肪酸の大量摂取については、「同量のカロリーを炭水化物から摂取するのにくらべて、全体の死亡率を11~19%の範囲で低下させることに関連」とされている。
飽和脂肪酸およびトランス脂肪酸の摂取には、どのような危険性があるのだろうか。以下、フードプロデューサーで一般社団法人日本オーガニックレストラン協会代表理事の南清貴氏が解説する。
よく肉を食べる人ほど心臓病のリスク増?
数年前、米カリフォルニア大学のディーン・オーニッシュ教授は「赤身肉の摂取量を減らせば、糖尿病や心臓疾患、脳卒中、がんなどの疾患の発症が減る可能性がある」と述べています。また、アメリカで最も信頼のおける疫学者のローランド・L・フィリップス博士は、1972年に「肉を週に1~2回食べる男性は、まったく食べない人より心臓病で亡くなる可能性が44%高く、3~5回食べる人は60%、6回以上の人は62%も高くなる」と述べています。
つまり、「肉を食べる量が多くなればなるほど、心臓病のリスクが高まる」ということは、だいぶ前から科学的に立証されていたのです。私たちは、脂肪に関して意外なほど無知です。栄養士や管理栄養士の人たちも「脂肪は1グラム9キロカロリーの物質」ということしか教えられていないため、その種類や効能について、それほど詳しくはありません。