簡単に説明すると、毛髪の内部に合成染料を入れ込んで染めています(図)。合成染料にもさまざまな種類がありますが、色素が発色できる構造として多いのが窒素(N)を持つものです。いわゆるアゾ化合物やジアゾ化合物が多いのもこのためです。
これらのなかには、特に欧州をはじめとした海外で、アゾ系染料は発がん性の懸念から使用中止になる染料もあります。構造上、どうしても化学的活性が高くなりやすい(化学的に不安定な)ことと、こうした疑念は切り離して考えることはできません。
白髪染めシャンプーは安全なのか?
さて、一般の消費者は、天然の成分が髪を染めていると思いこみ、まさか合成染料が毛髪の内部にまで入り込んで染めているということを知らない方がほとんどではないでしょうか。その事実を知って、とても心配になってしまうかもしれません。しかし、ひとつ安心できる材料としては、髪の毛は死んだ細胞だということです。死んだ細胞の中にとどまってくれればよいと考えることもできるのです。
髪の毛と同じように、皮膚の表面も死んだ細胞でできています。法律では、化粧品は皮膚において、表面の死んだ細胞部分(角層)までしか作用(浸透)してはいけないことになっています。ただし、現状では多くの化粧品で、角層より下まで成分が作用している状況にあります。
一方、髪の毛の場合は、表面だけという規制はないため、内部にまで作用することが許されています。
そのため、ヘアカラーやヘアマニキュア、白髪染めシャンプーなどで使用されている染料は、しっかりと髪の毛の中に入り込むように計算されてつくられています。そこで使用されているのが、溶剤や合成界面活性剤です。
溶剤や合成界面活性剤が入っているのは、髪をしっかりと染めるためです。毛根や毛母細胞を守るために、常に皮脂が分泌されているので、頭皮は皮脂で覆われています。その影響で髪も油のコーティングがされています。このままでは髪は染まりにくいのです。だから、シャンプーにしてもリンスしても洗浄剤を入れて、頭皮や髪の油を取り除くほうが染まりやすくなります。
もうひとつは、染料自体の分散を良くするためです。染料を溶かすには溶剤や界面活性剤の力が必要です。染料や着色剤と共に、さまざまなエキスを水にすべて溶かし込むには、強力な乳化剤や溶剤の力を借りなければなりません。商品には、ウォータープルーフのマスカラも一発で落とせるような原料や、ヘアカラー乳化剤といって染料を溶かす専用の原料が多々添加されていることは、あまり知られていません。