更年期障害、線維筋痛症、慢性疲労症候群、パーキンソン病などで効果
女性特有の更年期障害や、それに付随するさまざまな不定愁訴の大幅な改善が見られるだけではなく、線維筋痛症、慢性疲労症候群、パーキンソン病など、決定的な治療方法がない疾患でも患者さんの症状が緩和されていく様子を目の当たりにして、この療法の効果に対する確信をますます深めたという。
現在、天野氏が女性外来を担当する静風荘病院(埼玉県新座市)にも2機の乾燥サウナが設置されており、入院しての治療も可能である。冷え性、線維筋痛症、慢性疲労症候群、過敏性腸症候群、更年期症候群などに効果をあげている。
「治療後、自宅でも風呂に入って体を温め、“和温もどき”を続けることで、効果を維持している患者さんもいます。またパーキンソン病などの難治性の神経変性疾患では、歩行困難な患者さんが治療後に歩行が可能になるなど、劇的な改善が見られる症例もあります。身体を温めることは、すべての病気の根幹に効く治療です。体を温め、血流を促し、リラックスさせるのです。副作用もなく、悪いはずがありません」(同)
和温療法の開発者である鄭氏が主催するホームページ「和温療法」では、この治療法について次のように説明している。
「全身の血管機能・血管新生を促進して、全身の血流を改善する治療法ですので、すべての臓器別診療科と連携できる治療法です。また、『和温療法』は中枢・末梢の自律神経や神経体液性因子(ホルモン活性)を是正し、自己免疫や生体防御機構を賦活化し、さらに心・精神を和ませ、心身をリフレッシュさせる全人的治療法です。従って、様々な難治性疾患に効果的だけでなく、それらの疾患の軽症な時から施行すれば各疾患の進行を抑制し、さらには原因疾患の予防や健康回復にも効果が期待できる治療法です」
性差医療では男女の差を考え、患者さんの話を聞き、一人ひとりにじっくりと対応する。いってみれば、オーダーメイド医療の第一歩だ。そのパイオニアである天野氏が、和温療法のような「万人にやさしい」和温治療に行き着いた。
実は個別化医療を支える大きな力となるのは、専門化された先進医療だけではなく全人的治療法のようなアプローチなのかもしれない。
(取材・文=梶浦真美)
天野恵子(あまの・けいこ)
1967年、東京大学医学部医学科卒。1988年、東京大学保健管理センター専任講師。1993年、東京水産大学(現:東京海洋大学)保健管理センター教授。2002年より千葉県立東金病院副院長および千葉県衛生研究所所長。2009年より埼玉県新座市の静風荘病院にて女性外来を開始している。日本における性差医療のスペシャリスト。循環器疾患、更年期における諸疾患、線維筋痛症、慢性疲労症候群などが専門。日本性差医学・医療学会(理事)、性差医療情報ネットワーク(代表世話人)。主な著書に『行き場に悩むあなたの女性外来―「部分」ではなく「全体」を治す』(2006年 亜紀書房)、『性差医療―性差研究が医療を変える』(2005年 真興交易(株)医書出版部)などがある。