「買い物弱者(買い物難民)」は推計700万~1000万人
内閣府や総務省統計局のデータに基づき、経産省が以下の計算式で割り出した日本全国の買い物弱者数は700万人超である。
買い物に困難を感じている人の割合(17.1%)
×60歳以上高齢者数(4198万人:平成26年人口)
=買い物弱者数(推計:約718万人)
つまり、この推計はあくまでも「60歳以上高齢者数」から割り出したものにすぎず、ほかの世代を含めれば優に1000万人を超えるという見立てもある。
昼間人口・夜間人口の差が著しい大都市部(自治体例:東京23区など)では、そもそも地価が高く出店不可。かつて団塊の世代が一斉に住みついたベッドタウン(同:さいたま市、千葉市など)では閉鎖店が相次ぐ。
地方都市(同:広島市、仙台市、水戸市など)ではバイパス沿いの大規模店舗進出に伴い、公共機関も郊外化の一途でシャッター商店街が急増中。農村・山間部(同:岩手県西和賀町、茨城県常陸太田市など)では採算のとれない小売店が早くから撤退している――など「フードデザート」は侮れない。
すでに問題が顕在化している農村・山間部に加え、他地域でも深刻化が予測され、経産省の『買物弱者・フードデザート問題等の現状及び今後の対策のあり方に関する報告書』でも、今後の問題傾向をこう要約している。
・大都市:高齢者人口は今後20年にわたって増加するため、買い物弱者問題は深刻化すると予測
・ベッドタウン:高齢化スピードは2035年にかけては鈍化するが人口は増加。問題は深刻化すると予測
・地方都市:高齢化スピードは鈍化するが高齢化率は最も高く、問題は深刻化すると予測
つまり、どこに住んでも「深刻化」が予測されている。同報告書は「買い物弱者問題は都市の抱える問題の入り口」であると前置きし、そこから生じる波及課題の全体像をこう警告している。
「その影響として、生きがいの喪失、低栄養、転倒・事故リスクの増大、商店街の衰退による治安悪化が懸念されている」
一方、セブン-イレブンが「高齢者目線」で団地住民向けに特化したコンビニ展開(全国で100店舗ほど)をし、食事の宅配や電球交換も提供すると発表。アマゾンは「生鮮食料品」の取り扱いを始め、ヤマト運輸は自動運転宅配の実証実験開始(その名も「ロボネコデリバリー」!)を発表した。
ここ最近、「買い物弱者」関連のニュースが並んだ。買い物弱者は、つかの間の会話やヒト同士の温もりさえも奪われる覚悟を強いられる。
(文=ヘルスプレス編集部)