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万引きがやめられない…高齢女性の窃盗症が社会問題化、夫との死別が契機に

取材・文=里中高志
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若い女性の場合は摂食障害の併発も

 クレプトマニアの始まりには、さまざまなケースがある。何気なく立ち寄ったスーパーで晩ご飯の食材を懐に入れてしまったり、たまたま所持金がなく思わず盗んだなど、きっかけは些細なことが多い。

 だが、そのときの状況を振り返ると、孤独が引き金になっているケースが多いという。

 日課のように万引きをするようになる人もいれば、月1回、年に数回という人もいる。なかには、「捕まるまでに1000回以上は盗んだ」と告白したり、「いま身につけているものの8割は盗んだもの」とあっけらかんと話す人もいる。平均的に見れば、6回目くらいの万引きで捕まるケースが多いらしい。

 若い女性の場合は、摂食障害を併発していることが多いのが特徴だ。スーパーやコンビニで食べ物を盗み、すぐ近くのトイレで「過食」「嘔吐」という行動につながっていく人もいれば、帰宅してから家族に隠れて「過食」「嘔吐」を繰り返す人もいる。

 化粧品やアクセサリーなどを盗むケースもある。親子関係で抱えた葛藤から、自らが捕まることで「注目してほしい」一方で、「親を罰したい」という心理が根底に潜んでいる場合もある。

盗み原因は「生活苦」ではない

 クレプトマニア全体に話を戻せば、やがて盗むことに対する衝動がまったく抑えられなくなると、ポケットに入りきらないほどシャケの切り身を入れたり、明らかに見つかる盗み方をする。

 店内に万引きGメンがいても、手を出さずにいられない人もいる。

 斉藤氏は、「万引きを繰り返さずにいられないのは、瞬間的でも気分転換や達成感があること。現在、抱えている不安や苦痛が一時的にでも緩和できることや、自分が自分でないような感覚を得られるようです」と話す。

 クレプトマニアの原因の多くは、生活苦ではない。大森榎本クリニックを受診する人のなかにも、生活困窮者はほとんどいないという。

 斉藤氏は、今後高齢者におけるアディクション(常用癖)は、アルコールと万引きが2大テーマとなっていくだろうと考えている。
(取材・文=里中高志)

斉藤章佳(さいとう・あきよし) 
大森榎本クリニック精神保健福祉部長。アジア最大規模といわれる依存症施設「榎本クリニック」(東京都)で、精神保健福祉士・社会福祉士としてアルコール依存症を中心にギャンブル・薬物・摂食障害・性依存・虐待・DV・クレプトマニアなどのアディクション問題に携わる。大学や専門学校で早期の依存症教育にも積極的に取り組む。講演も含め、その活動は幅広くマスコミでも取り上げられている。著者に『性依存症の治療』(金剛出版.2014)、『性依存症のリアル』(金剛出版.2015)その他論文多い。

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