公益財団法人高速道路調査会によれば、高速道路本線で年間2万件以上の事故が発生し、その最大の事故原因である前方不注視は47%に上り、死亡事故の約4割を占めている。
前方不注視の大きな要因のひとつが居眠り運転だ。その重大事故が深刻な社会問題となっていることから、居眠り運転防止に向けた官産学連携の対策が講じられているものの、居眠り運転による事故が減る兆しはない。妙案はないのだろうか。
この逼迫した事態には、やはり人工知能(AI)が救世主に躍り出るほかないようだ。
目の瞬き、眠そうな表情、浅い眠気をAIが検知・予測し、眠気のが起きない車内環境に
パナソニック オートモーティブ&インダストリアルシステムズ社は、運転者の眠気を検知・予測し、眠くなりにくい覚醒状態を維持するAIによる眠気制御技術を開発したと発表した(7月27日付「engadget日本版」)。それは、どのようなシステムだろうか。
今回の眠気制御技術は、カメラ画像から測定した目の瞬き、眠そうな表情などをAIで処理し、初期段階の浅い眠気を検知しつつ、人の放熱量、照度などの車内環境データに基づいて、眠気の推移予測を行いながら、推移予測によって車内温度などを調整し、眠気のない快適な車内環境を維持するシステムだ。
従来の眠気制御システムは、赤外線によって、まばたきや視線の変化などから眠気を検出する技術(アラーミーなど)や、センサ機器を耳たぶなどに装着し、眠気を検知後にアラートや振動で警告するウエアラブルシステム(フィーリズムなど)が主流だったが、このシステムは、どこが違うのだろう。
今回の技術は、非接触で行えるカメラを利用したシステムで、運転者に負担を与えず、表情や車内環境から初期の眠気を予測する。最大の特徴は、無自覚な浅い眠気を検知できるため、運転者の快適さを損なわずに、覚醒状態が維持できる点だ。つまり、寒く明るければ眠くなりにくく、温かく薄暗ければ眠くなりやすい生理作用を活用しているので、自然かつ快適に眠くならない環境をつくることができる。
なお、感知センサは、カメラだけでなく赤外線アレイセンサによって体表温度を常にモニタリングしているため、初期の眠気制御は覚醒状態に対応している。したがって、眠気レベルが高い場合は、アラート(警報)で対処している。
眠気制御システムの流れを整理すると、以下のようになる。
エアコン(風速・風温)や赤外線アレイセンサの放熱量を算出し、温冷感を推定する
→環境センサ(照度)やカーナビ(到着時間など)が睡気を予測する
→空調制御や休憩場所の提案によって快適睡気制御を行う
→同時に、カメラが目の瞬き、眠そうな表情を検知する
→眠気レベルが高ければ、アラート(警報)や休憩指示などの緊急睡気制御を行う
発表によれば、この眠気制御システムは、10月にも大手自動車メーカーの開発に初導入される見込みという。