出雲“縁結び”空港は超便利!三大都市圏に直行便、眺望最高、源泉掛け流し温泉まで
空港にはさまざまな「名称」がある。
正式名称とは別に、空港は「通称」や「愛称」が使用されるケースが多々ある。たとえば、東京の「羽田空港」は通称で、正式名称は「東京国際空港」。一方で宮城の「仙台空港」は正式名称で、愛称は「仙台国際空港」だ。
役割の変化と共に、正式名称が変わった例もある。「成田国際空港」はかつて「新東京国際空港」だったし、「名古屋飛行場」は「名古屋空港」だった。成田の場合は民営化や羽田の再国際化、名古屋は中部国際空港の開港によって、国から県へ管轄が移管されたことがきっかけになっている。
最近の流行は、空港に愛称を付けることだ。仙台空港や中部国際空港(セントレア)、神戸空港(マリンエア)などを除くと、地名にサブネームを加えて、ご当地の名産や名勝などをPRしているところが多い。これがかなりカオスな状態となっている。
以下に、各地の愛称のある空港の正式名称と愛称とを列挙してみた。愛称だけでどこの空港かわかる方は、地元の方か、あるいは相当の空港好きではなかろうか。
[動植物]
●但馬飛行場(コウノトリ但馬空港)
●対馬空港(対馬やまねこ空港)
●釧路空港(たんちょう釧路空港)
●宮崎空港(宮崎ブーゲンビリア空港)
●福江空港(五島つばき空港)
[人物・キャラクター]
●高知空港(高知龍馬空港)
●岡山空港(岡山桃太郎空港)
●鳥取空港(鳥取砂丘コナン空港)
●美保飛行場(米子空港・米子鬼太郎空港)
[地理]
●静岡空港(富士山静岡空港)
●旭川空港(北海道のまん中・旭川空港)
●新石垣空港(南ぬ島 石垣空港)
[その他]
●徳島飛行場(徳島空港・徳島阿波おどり空港)
●出雲空港(出雲縁結び空港)
●徳之島空港(徳之島子宝空港)
●岩国飛行場(岩国錦帯橋空港)
●富山空港(富山きときと空港)
●山形空港、庄内空港(おいしい山形空港、おいしい庄内空港)
●多良間空港(かりゆす多良間空港)
●能登空港(のと里山空港)
●隠岐空港(隠岐世界ジオパーク空港)
●種子島空港(コスモポート種子島)
出雲大社にあやかった「出雲縁結び空港」の愛称…三大都市圏全てに直行便、利用者も増加中
さて、今回ご紹介する出雲空港の「サブネーム」は、「縁結び」だ。つまり「出雲縁結び空港」である。なんだか唐突なネーミングだが、これは近隣に位置する出雲大社が縁結びの神様(男女の縁だけでなく、人間関係などあらゆるつながりの「ご縁」を指す)として信仰されていることに由来する。2010年7月に、島根県の出雲空港愛称検討懇話会において、なんと「全会一致」で決定された。
山陰地方には6つの空港がある。東から兵庫県の但馬飛行場(コウノトリ但馬空港)、鳥取県の鳥取空港(鳥取砂丘コナン空港)、美保飛行場(米子空港・米子鬼太郎空港)、島根県の出雲空港、石見空港(萩・石見空港)、さらに北方の日本海上に隠岐空港(隠岐世界ジオパーク空港)がある。
岡山県、広島県にそれぞれ1カ所ずつしか空港がないことを考えると、人口減少が進んでいる山陰地方にしてはやや過密という印象を受ける。しかし、コロナ禍の影響を受けた2020年を度外視すれば、出雲空港の利用者数は、基本的に微増傾向が続いている。
最大の強みは、三大都市圏全てに直行便があることだ。東京・羽田と大阪・伊丹便などは日本航空の運航だが、2015年よりフジドリームエアラインズが就航したことで、路線数が大きく増えた。名古屋便のほか、仙台、静岡、神戸便も追加され、中国地方では屈指の利便性を誇る空港となっている。
今回は、出雲空港から、JR山陰本線の荘原(しょうばら)駅まで歩いてみた。実践したのは2020年12月上旬。緊急事態宣言が発令される前、気候的にもまだ晩秋といった雰囲気で、寒さを感じない時期だった。
眺めも最高で子連れにも人気、出雲空港は飛行機・空港ウォッチャーには天国のような空港
出雲空港のターミナルビルは、オーソドックスな地方空港のつくりだ。1階は航空会社のカウンターと到着ロビー、2階は出発ロビーと物販店など、3階は飲食店と展望デッキという構成となっている。現在のターミナルは1993年に完成したが、まだ真新しさが残っている。
展望デッキより滑走路を眺めると、左手に広大な芝生の敷地があることに気づいた。空港の東側、宍道湖との間には、駐機エプロンと同じくらいの広さの公園が広がっている。早速行ってみると、飛行機を身近に眺められる絶好のビュースポットとなっていた。小さな子どもを連れた家族連れがたくさんいて、みんな飛行機に手を振っている。
さて、公園は行き先とは逆方向なので、いったんターミナル方面に戻ってから西へと歩いて行く。周辺を歩いてみて感じるのが、とにかくこの空港は飛行機や滑走路が見やすい。
空港の多くは、発着の際に周囲の障害物に干渉されないように、山の上、もしくは盛り土をした高台に位置している。平地であってもコンクリート板などで周囲を覆っているところが多いのだが、出雲空港は金網のフェンスがあるのみ。滑走路が周囲と同じレベルの高さなので、遠くまで見渡せるのだ。
離着陸の瞬間だけでなく、駐機している様子も外から見られるのは嬉しい。貨物運搬車や消防車などの「はたらく車」もたくさんあり、子ども連れに人気なのもうなずけた。
滑走路の西端部分へ近づくと、レンタカー会社の営業所などがちらほらと出現する。空港敷地の西端を左折すると、滑走路のILSローカライザーのアンテナが真っ正面から見られる場所を見つけた。出雲空港は、飛行機・空港ウォッチャーにとっては天国のような空港だ。
出雲空港からJR荘原駅までは3.6km、空港周辺は飽きないし国道9号沿いも賑やかなので歩いていて楽しい
南進していくと、新建川という小さな川にあたる。未舗装の堤防をしばらく歩き、再び南へ折れると、国道9号にぶつかった。幹線道路だけに、沿線にはホームセンターやたい焼き屋、ラーメン屋など商店もいくつかあり、賑やかだ。
広い歩道を500mほど西へ進むと「道の駅湯の川」が見えてきた。レストランや特産品売り場といった、いかにも道の駅らしい施設だけでなく、色とりどりの花が展示・販売されている「花ハウス」や、湯の川温泉の湯を引いた足湯も設置されている。
湯の川温泉は、ここから南に1kmほど向かったところにある、源泉掛け流しの温泉。宿泊施設と日帰り温泉施設がある。島根県には玉造温泉や温泉津(ゆのつ)温泉など、全国的に知られる名湯が数多くあるが、湯の川温泉は「日本三美人の湯」としてPRを行っている。
道の駅の裏手を左折すると、荘原駅が見えてきた。こじんまりした駅だが、2020年3月に新しくなったばかりの駅舎はピカピカ。簡易改札機を備えているため、交通系ICカード「ICOCA」も利用可能だ。
今回のルートは3.6kmと短距離で、楽な徒歩だった。空港周辺は飽きないし、国道9号沿いも賑やかなので歩いていて楽しい。所要時間も45分と、適度な運動といった感じだ。
出雲空港からはJR松江駅、出雲市駅のほか、出雲大社や玉造温泉など周辺の観光拠点への連絡バスが発着している。松江、出雲両市の間に大きな都市はない。荘原駅まで歩くメリットはなさそうに見える。
ただし、空港から松江駅までのバス料金は1050円(約35分)。一方で荘原駅から松江駅への電車代は420円だ。出雲市駅もバスが720円(約30分)、電車が240円と、電車のほうが格段に安い。松江や出雲から、さらにJRへ乗り換える必要がある場所へ行くのなら、バスと電車のこの金額差はさらに広がるだろう。この距離なら、LCCを活用する節約派は、荘原駅までいったん歩いてから電車で移動する、というやり方にも一考の余地があるかもしれない。
(文=渡瀬基樹)