読者の皆さんは、本連載前回記事で紹介した食品摂取の多様性評価票を使って、自身の多様性得点を算出されただろうか。この得点は開発した本人も驚くほど、将来の健康状態を予測する力を持っている。
食品摂取の多様性得点を開発し学術論文にして発表したのは2003年である。その当時、日本の健康と栄養科学領域の多くの研究者からは、ほとんど見向きもされなかった。ところが最近は引用許諾申請が絶えず、浅薄な知識に基づく無断引用が発覚する始末である。
この変数の特別な価値にいち早く気づいたのは、幅広い科学情報を収集し評価しながら施策や出版物に結びつける、研究活動とは無縁のビジネスに関わる方々だった。誰でも簡単に算出でき、管理栄養士が得意の栄養摂取量の計算や栄養成分の科学情報などまったく必要ない。それにもかかわらず、将来の健康状態を予測する科学的な妥当性を有する指標だからだ。これまで公的機関から示されてきたさまざまな健康づくりツールが、いかに専門家目線でつくられ実用性を備えていなかったか、メディアの方々は辟易としていたのだろう。
さて、まずは多様性得点の平均レベルの話から解説したい。この点数は概ね直近1週間の毎日の食事を思い出し、10の食品群のなかで「ほとんど毎日」食べたと「自信」をもって判断できる食品群数を足し合わせたものである。下駄をはかせた得点では、せっかくの機会が台なしである。如実にありのままの得点を算出することをおすすめする。
この得点は、今はやりの糖質制限食やヘルシー・ダイエット志向の食事の実践者、あるいは菜食、粗食主義者ではとても低くなる。また1日3食を基本とした食生活を逸脱している方々も同様である。この得点には、自身が持ち合わせている食事に対する価値観が反映される。そのため点数の低い人は、社会生活の基盤をなす食の営みが成立していないことを意味する。
シニアの健康寿命の伸長を目的に開発された変数のため、精緻に調査された信頼できるデータはシニア世代を対象としたものが多いが、筆者は若者の多様性得点が気になり、大学生を対象とした、それも管理栄養士を養成する学科の学生約250人を対象に調査したことがある。平均値はなんと約3点であった。大学生の貧相な食事の実態には開いた口がふさがらなかった。