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熊谷修「間違いだらけの健康づくり」

食事の質で、老後の体力と知的活動力の衰えに2.5倍の差

文=熊谷修/東京都健康長寿医療センター研究所協力研究員、学術博士

 推測だが、仕事に忙殺される社会人になりたての単身者も子育て世代も、さほど大きな差はないと踏んでいる。筆者がまとめあげ近く発表される予定の65歳以上シニア約2万人の信頼できる学術データをプレビューすると、平均点は約4点、全体の40%は3点以下であった。健康づくりに高い関心をもつシニア世代であっても、平均点は4点であることがわかっている。地域の健康づくり活動で提供される情報内容に問題があるため、健康志向の高いシニアであっても多様性得点はさほど高くならない特徴がある。わが国のシニア世代の食事問題は相当深刻である。これが食の砂漠化が進むわが国の現状である。

「体」「知」「情」の衰えの速さを左右

 それではこの多様性得点の予測力であるが、次の3つの健康指標の低下を予測できる。

(1)筋骨格の衰えによる生活活動力
(2)生活に楽しみをもたらす知的活動力
(3)人を思いやる豊かな情緒力

 この「体」「知」「情」の老化によって衰える速度が予測できるのである。

 約1200人の65歳以上シニアを7年間追跡したデータがある。まず生活活動力であるが、0~3点のシニアは9~10点のシニアに比べ生活活動力(手段的自立)が2倍の速度で衰えていく。知的活動力(知的能動性)は同じ比較で2.5倍の速さで衰える。豊かな情緒力(社会的役割)は2.5倍の速度で衰える(熊谷修著:『正しい肉食』<集英社>)。

 得点の低いシニアの「体」「知」「情」の衰えの速さは、体の栄養状態の急速低下からくる虚弱化によるものだ。食品摂取の多様性が低い若年者でこのようなシビアな結果が確認されていないのは、研究データがとても少ないためだ。また、今後データが収集されても、体の予備力でなんとかカバーできているため、顕在化しにくいことも考えられる。

 もっとも、得点が低い若年者は、そうでない若年者より情緒が不安定でストレスコーピングが苦手との知見がすでに発表されている。この得点は自身の人生(特に後半)の総合的なリスク水準を反映している。得点の低い食事はリスクの高い人生を呼び込んでしまう。若い頃から食事には気を配ったほうがいい。老婆心ではない。これまでの栄養科学では触れられることのなかった、新しい科学情報である。
(文=熊谷修/東京都健康長寿医療センター研究所協力研究員、学術博士)

熊谷修/博士(学術)、一般社団法人全国食支援活動協力会理事

熊谷修/博士(学術)、一般社団法人全国食支援活動協力会理事

1956年宮崎県生まれ。人間総合科学大学教授。学術博士。1979年東京農業大学卒業。地域住民の生活習慣病予防対策の研究・実践活動を経て、高齢社会の健康施策の開発のため東京都老人総合研究所(現東京都健康長寿医療センター研究所)へ。わが国最初の「老化を遅らせる食生活指針」を発表し、シニアの栄養改善の科学的意義を解明。介護予防のための栄養改善プログラムの第一人者である。東京都健康長寿医療センター研究所協力研究員、介護予防市町村モデル事業支援委員会委員を歴任

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