厚生労働省がまとめた2016年調査によると、日本人の健康寿命は男性が72.14歳、女性74.79歳といずれも延び続けている。
最近では、雑誌や新聞、テレビなどで健康をテーマに取り上げると販売部数や視聴率が伸びる傾向にあり、特に中高年の健康に対する意識が高まっていることが健康寿命の延びにつながっているようだ。加えて空前の健康食ブームもあり、食への関心が高まっていることも要因のひとつだろう。
東京都では「東京都健康推進プラン21」を掲げ、都民が望ましい生活習慣を実践できる食環境づくりを推進している。
野菜中心の食生活が生活習慣病の予防に有効なことは間違いないが、年齢を重ねるとともに、野菜の摂取には少しばかり注意も必要だ。
野菜や果物に豊富なカリウム
野菜や果物には、カリウムが多く含まれている。健康な人の場合は、多少のカリウムを摂取しても尿と共に排泄され、身体に悪影響を及ぼす心配はない。それどころか、カリウムは体にとって重要なミネラルであり、体液の浸透圧調整、筋肉の収縮、神経の働きを保つなど、さまざまな役割を持つ。しかし、加齢や腎不全などで腎機能が低下していると血液中のカリウム濃度が高くなり、「高カリウム血症」を引き起こしてしまう。
高カリウム血症は、筋肉痛、筋力の低下、悪心、嘔吐、下痢、痺れなどの症状を伴う。さらに重症化すれば、四肢麻痺 、自律神経失調、筋肉痙攣、呼吸筋麻痺、不整脈、麻痺性腸閉塞などを引き起こし、生命の危機さえ招く可能性もある。
健常な人には心配ない高カリウム血症だが、加齢や疾患による腎機能低下のほか、薬剤の副作用や化学療法の影響など、原因はさまざまにある。糖尿病や高血圧などの治療薬中にも高カリウム血症を引き起こす可能性があるものもあり、予防のためにも定期的な血液検査で腎機能を知ることが大切である。
一般に、加齢とともに身体の機能は低下する傾向にある。腎機能が低下していても自覚症状がない場合も多い。中高年からの定期的な検査と偏らない食生活を心がけていただきたい。
(文=吉澤恵理/薬剤師、医療ジャーナリスト)