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熊谷修「間違いだらけの健康づくり」

高齢者1245人の追跡調査で判明、長寿命の人に共通の「食事法」

文=熊谷修/東京都健康長寿医療センター研究所協力研究員、学術博士
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 一方、かなり経過してからの死亡との関係は、食生活習慣そのものの影響ととらえることができる。一般に生活習慣と総死亡リスクとの関係を分析する際は、追跡開始から2~3年内の死亡は除いて分析する。紹介するデータはこの問題を解消するために開発された追跡開始から死亡するまでの時間の影響を加味酌量する分析法によるものである(この分析法をコックス比例ハザードモデルという)。

 まず、調査開始時に1245名の食品摂取の多様性得点を調査する。食品摂取の多様性得点の算出方法は連載18(2018年1月31日付)を参照してほしい。そして三分位の0点~3点のグループ、4点~6点のグループ、7点~10点のグループに区分して各グループの7年間の総死亡の相対危険度を算出した。

 その結果、0点~3点のグループに対して4点~6点のグループの危険度は22%低かった。同様に7点~10点のグループの危険度は32%低かった。この関係は直線的で偶然、あるいは誤りの確率は1%未満で、統計的に有意であった。このリスク差は性、年齢、脳卒中、心臓病、糖尿病、高血圧、趣味の有無、喫煙習慣、運動習慣の影響を調整して算出している。シニア世代では趣味の有無と喫煙習慣は総死亡リスクに大きく影響し、趣味は余命を延ばし(総死亡リスクを下げ)、喫煙習慣は死を早める(総死亡リスクを上げる)。

 一方、メタボリックシンドロームの循環器疾患は総死亡リスクにあまり関係しない。趣味と喫煙の2つの強烈な予知因子を酌量しても、食品摂取の多様性得点は総死亡リスクを単独で変動させており、高得点のシニアほど余命は長い。小欄シリーズで幾度か触れてきたが、食品摂取の多様性得点が高いことは、体の栄養状態を高め、同時に心の健康度(安寧の情緒)も高める。その結果として“死”そのもののリスクを低減するのである。やはり食事の質は、人生の量も質も決めてしまうのである。
(文=熊谷修/東京都健康長寿医療センター研究所協力研究員、学術博士)

熊谷修/博士(学術)、一般社団法人全国食支援活動協力会理事

熊谷修/博士(学術)、一般社団法人全国食支援活動協力会理事

1956年宮崎県生まれ。人間総合科学大学教授。学術博士。1979年東京農業大学卒業。地域住民の生活習慣病予防対策の研究・実践活動を経て、高齢社会の健康施策の開発のため東京都老人総合研究所(現東京都健康長寿医療センター研究所)へ。わが国最初の「老化を遅らせる食生活指針」を発表し、シニアの栄養改善の科学的意義を解明。介護予防のための栄養改善プログラムの第一人者である。東京都健康長寿医療センター研究所協力研究員、介護予防市町村モデル事業支援委員会委員を歴任

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