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一方、かなり経過してからの死亡との関係は、食生活習慣そのものの影響ととらえることができる。一般に生活習慣と総死亡リスクとの関係を分析する際は、追跡開始から2~3年内の死亡は除いて分析する。紹介するデータはこの問題を解消するために開発された追跡開始から死亡するまでの時間の影響を加味酌量する分析法によるものである(この分析法をコックス比例ハザードモデルという)。
まず、調査開始時に1245名の食品摂取の多様性得点を調査する。食品摂取の多様性得点の算出方法は連載18(2018年1月31日付)を参照してほしい。そして三分位の0点~3点のグループ、4点~6点のグループ、7点~10点のグループに区分して各グループの7年間の総死亡の相対危険度を算出した。
その結果、0点~3点のグループに対して4点~6点のグループの危険度は22%低かった。同様に7点~10点のグループの危険度は32%低かった。この関係は直線的で偶然、あるいは誤りの確率は1%未満で、統計的に有意であった。このリスク差は性、年齢、脳卒中、心臓病、糖尿病、高血圧、趣味の有無、喫煙習慣、運動習慣の影響を調整して算出している。シニア世代では趣味の有無と喫煙習慣は総死亡リスクに大きく影響し、趣味は余命を延ばし(総死亡リスクを下げ)、喫煙習慣は死を早める(総死亡リスクを上げる)。
一方、メタボリックシンドロームの循環器疾患は総死亡リスクにあまり関係しない。趣味と喫煙の2つの強烈な予知因子を酌量しても、食品摂取の多様性得点は総死亡リスクを単独で変動させており、高得点のシニアほど余命は長い。小欄シリーズで幾度か触れてきたが、食品摂取の多様性得点が高いことは、体の栄養状態を高め、同時に心の健康度(安寧の情緒)も高める。その結果として“死”そのもののリスクを低減するのである。やはり食事の質は、人生の量も質も決めてしまうのである。
(文=熊谷修/東京都健康長寿医療センター研究所協力研究員、学術博士)
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