そもそも、混雑を放置する鉄道会社の責任?
とはいえ、できることなら「ドア付近に立ち止まる人が少なくなってほしい」と思うのが人情だ。冒頭で触れたように、ドア付近で人が固まっていると乗降時の事故につながる危険性もある。
それにもかかわらず、鉄道会社がなんらかの対策を行っている様子は見受けられない。車内アナウンスをするくらいなら、ドア付近に「このあたりで立ち止まらないでください」といった注意書きがあってもよさそうなものだが……。
この点について、交通コンサルタントで株式会社ライトレールの阿部等さんはこう説明する。
「よく聞くのが、『ドア両脇のくぼみに立つ人が邪魔だ』という声です。ただ、ドア両脇のくぼみは、そこに人が立てるスペースとして設計されたものです。だから、『邪魔だな』と思うかもしれませんが、あそこに立つこと自体は問題ないんですよ」(阿部さん)
しかし、ドア両脇のくぼみは車両によって形状に違いがある。広めに設計されている電車なら問題ないが、狭いスペースしかない車両は乗降の際に邪魔になるケースも多い。
ところが、ドア両脇のくぼみは電車の構造上の問題のため、車内に注意書きを掲示するわけにもいかない。そのため、対応としてはアナウンスで呼びかけることしかできないのが現状のようだ。
「電車内でイライラするそもそもの原因は、電車がそこまで混雑していることです。本来は、ドア付近に人が固まらないくらいに乗車率を下げるべきです。電車の運行本数を増やす余地は、実施していないだけで、本当はまだあるのです。運用に関する費用は、着席サービスを有料化することで賄うなど、方法はいくらでも考えられます」(同)
「電車の混雑解消を求める声が高まれば、鉄道会社も行政も取り組むようになるはずだ」と阿部さんは言う。
電車のドア付近で立ち止まる人に対し、現時点では乗客がマナーのある対応をするしかないが、問題を根本から解決するため、鉄道会社には早急に満員電車をなんとかしてもらいたいものだ。
(文=中村未来/清談社)