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熊谷修「間違いだらけの健康づくり」

テレビ番組などの「長寿の秘訣」はフェイクが多い…単なる観察比較の情報には要注意

文=熊谷修/一般社団法人全国食支援活動協力会 理事
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 しかし、それによって判明した余命を左右する項目が、介入によって改善修正できるものとは限らない。先進国に住んでいれば女性のほうが長命である。余命の規定要因で性差は決定的要因だ。長生きしたけりゃ女性になれなどと男性にアドバイスしたらブラックジョークになってしまう。健康づくりの手段は人間集団の観察型研究だけでは完成しないのである。

 筆者らは介護保険法が施行される10年前の1991年から、東京都老人総合研究所で要介護を防ぐ施策の重要性を予見し、老化を遅らせる一連の介入研究をスタートした。この研究では、地域のシニアの観察研究と日本人の平均寿命の伸長の背景にあった食事の変化(これまでのコラムですでに述べたとおり)などを吟味考察して、『老化を遅らせる食生活指針』を作成した。そしてこの指針を元気なシニアに実践してもらい、本当に老化が遅れるかどうか確認するのが研究の目的である。我が国はもとより国際的にみても先駆的な研究である。

 今回から数回にわたりこの『老化を遅らせる食生活指針』についてお話ししようと思う。指針は10項目からなっている。まず1番目の項目からである。

欠食は絶対避け、三食均等にたべる

 年を取ったら食べる量は少なくていいと思っている人が意外に多い。そんなことはない。地域で自立して元気で暮らすために必要なエネルギーや栄養量は、年をとってもさほど減ることはない。要介護高齢者はエネルギー不足が臀部や踵部の褥瘡の原因になる。われわれの体はエネルギー不足になると、自ら筋肉を分解してエネルギーをつくり出すからだ(糖質のたんぱく質節約作用)。

 しかし一方で個人差は大きいものの、40歳から70歳までに食べる量が10~25%減少する。老化に身を任せていると、その後はさらに減少する。この変化は不可避な老化によるところが大きいが、ただ受け入れ食べる量を減らしてしまうのではなく、しっかり食べ続けて栄養余力がつくれるかどうかがカギを握る。筆者は“攻めの食事”という。例えば1食抜いて、あとの2食で1日に必要な栄養量を摂ろうとしてもできないのがシニア世代だ。いわゆる“ため食い”がシニア世代はできない。“ため食い癖”の若者は多いが、年を取ったら老化を促す食事癖になるので厄介だ。

 さらに食事で摂取した栄養を体の組織に変える同化機能(アナボリックレスポンス)は、3食しっかりと良質なたんぱく質とエネルギーを摂らないと持続稼働しない。それでなくてもシニア世代は、同化機能の効率がかなり低下している。3食しっかり食べて、筋肉などからだの組織を修復更新する生理システムが稼働する時間を増やす。その食べ方として3食均等にしっかり食べる! 小欄の若い読者は父母、祖父母にぜひ勧めてほしい。
(文=熊谷修/一般社団法人全国食支援活動協力会 理事)

熊谷修/博士(学術)、一般社団法人全国食支援活動協力会理事

熊谷修/博士(学術)、一般社団法人全国食支援活動協力会理事

1956年宮崎県生まれ。人間総合科学大学教授。学術博士。1979年東京農業大学卒業。地域住民の生活習慣病予防対策の研究・実践活動を経て、高齢社会の健康施策の開発のため東京都老人総合研究所(現東京都健康長寿医療センター研究所)へ。わが国最初の「老化を遅らせる食生活指針」を発表し、シニアの栄養改善の科学的意義を解明。介護予防のための栄養改善プログラムの第一人者である。東京都健康長寿医療センター研究所協力研究員、介護予防市町村モデル事業支援委員会委員を歴任

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