ストレス過多社会といわれる日本だが、ストレスとうまく向き合い、コントロールするにはどうすればよいのか。10月に『「首尾一貫感覚」で心を強くする』(小学館新書)を上梓したストレス・マネジメント研究者の舟木彩乃氏に話を聞いた。
――まず、書名にもある「首尾一貫感覚」とはどのようなものでしょうか。
この感覚は大きく3つの感覚で構成されています。自分の置かれている状況や今後の展開を把握できると感じる「把握可能感」、自分に降りかかるストレスや障害にも対処できると感じる「処理可能感」、さらに自分の人生や自身に起こるどんなことにも意味があると感じる「有意味感」です。
――ストレスや不安に対処する力になる考え方ということですが、どうやったらそれらの感覚を身につけられるのでしょうか。
舟木 首尾一貫感覚を理解する際のポイントは、これらが「感覚」だということです。感覚として、「だいたいわかった(=把握可能感)」、「なんとかなる(=処理可能感)」、「どんなことにも意味がある(=有意味感)」と思えれば、ストレスや不安は小さくなっていきます。学術的な理論とか学問として理解しようとするよりも、成功体験や自己分析などを通じて3つの感覚を高めていき、身体全体に染みわたっていくようになることが理想だと思います。その実践法やメソッドについては、本の中でも紹介しています。
――舟木さんが首尾一貫感覚に着目されたきっかけは、何だったのですか。
舟木 もともと一般企業の人事部や病院でカウンセリングの仕事などをしていたのですが、たまたま知人の紹介で国会議員の秘書として議員事務所で働いた時に、議員秘書の労働環境の厳しさを垣間見ることになりました。あくまで一部の議員の話ですが、「秘書は下僕」と明言した衆院議員や、運転する秘書の頭を拳で殴る男性議員、自分の子供のスイミングスクールの送迎まで公設秘書にさせている女性参院議員などがいました。そういった過酷な労働環境を目の当たりにして、議員秘書のストレスはとても大きいに違いないと思ったのがきっかけで、大学院に進学してその研究をすることにしたのです。
実際、調査してみると高ストレス者の割合が通常の2倍以上もあり、議員秘書はストレスの多い職業であることがわかりましたが、興味深いことに、そんなストレスフルな職場であっても、明るく前向きに頑張っている議員秘書と、逆にストレスに押しつぶされそうになっている秘書がいました。両者の違いは何なのかを調査する中で、ストレス反応が低い議員秘書は首尾一貫感覚が高く、その逆もまた指摘できることがわかったのです。