――政府は「働き方改革」で企業に対して過重労働やパワハラをなくすように呼びかけていますが、政治家にとって最も身近な議員事務所で、なぜそういったブラックな労働環境が放置されているのでしょうか。
舟木 議員秘書は、労働基準法41条2号の「機密の事務を取り扱う者」に該当するため、「労働時間、休憩及び休日に関する規定」の適用外と考えられています。また、この職場は突然解雇されることも珍しくなく、議員の機嫌を損ねないよう、常に我慢や忍耐を強いられています。そのうえ、議員事務所は「50名未満」の職場に属するため、一般企業に義務づけられているストレスチェックの対象外とされています。その結果、「働き方改革」とは最も縁遠い職場になってしまっているのです。
首尾一貫感覚と所得
――経済格差と健康格差の相関は指摘されていますが、首尾一貫感覚も同じような関係にあるのでしょうか。首尾一貫感覚は、学歴や所得にも関係するのですか。
舟木 首尾一貫感覚の中でも、とくに処理可能感は所得と相関関係があるといえるでしょう。なにかの問題に直面しても、所得(=資産)が多いほど、処理可能感の“なんとかなる”という感覚は高くなるからです。
着目すべきは、ストレス・マネジメントの実証研究を通じて、「首尾一貫感覚の高さ」と「心身の健康度」「人生や仕事への満足感」などには正の相関が認められ、逆に「首尾一貫感覚の高さ」と「うつ傾向」や「病欠日数」などには負の相関があるという点です。ですので、首尾一貫感覚を高めることができれば、精神的にも肉体的にもプラスになる、ということはいえると思います。
莫大な資産を持つ金持ちや成功者、人々の憧れになっている一流の芸能人やスポーツ選手であっても、常にストレスや不安を抱えています。この世にストレスのない人はいません。また、ストレスを避けてばかりいたら、精神的に脆弱な人間になってしまいます。「適度なストレスは人生のスパイス」という言葉があるように、ストレスを感じても「なんとかなる」「乗り越えるべき人生の試練」などと受け止めて、前向きなパワーに変えられれば、仕事や勉強もうまくいくようになると思います。
――カウンセラーや心理学者、精神科医は、自分のメンタルはどのように管理しているのですか。
舟木 カウンセラーや医師であっても、日々さまざまなストレスを感じています。心理学や精神医学を研究しているからといって、誰もがメンタルが強いわけではありません。結局、その人なりに自分に合った方法でストレスを克服しているのではないかと思います。
私自身は、強いストレスや不安を感じた場合に、首尾一貫感覚の3つの感覚のうち、どの感覚が低くなっているのかを自分なりに見極めるようにしています。そして、「自分は今、何が把握できていないのか?」「今の自分を助けてくれる“仲間や武器”はないか?」「この試練にはどんな意味があるのだろう?」と考えて、これらの感覚を高めてくれる“ヒント”を探るようにしています。
――ありがとうございました。
(構成=編集部)