絶叫ネタで人気のピン芸人、サンシャイン池崎が持ちネタである「イエーイ!空前絶後の……」と叫び始めて間もなく、一瞬にして意識を失い倒れ込む様子が動画で拡散された。とはいえ、倒れていたのはほんの1~2分で、すぐに意識が戻り、その後も池崎持ち前の絶叫芸を繰り広げていた。
これが大声出しすぎた人の本気の気絶です。
— 岩井勇気 ハライチ (@iwaiyu_ki) December 11, 2021
放送事故レベルに目がイっています。#サンシャイン池崎 pic.twitter.com/uLtH4VGsUi
動画を見る限りでは、典型的な失神のようだ。実は、日常生活のなかで一定の状況下に置かれた場合、失神は誰もが起こす可能性がある。どんな時に失神が起きる可能性が高くなるのか、また予防策などについて、くぼたクリニック松戸五香院長の窪田徹矢医師に聞いた。
「サンシャイン池崎さんの症状は、いわゆる失神ですね。失神は、一時的に脳への血流が減少するため意識を失ってしまい起こります。その原因として、もっとも多いのが血管迷走神経反射によるものです」
池崎は絶叫した直後、血管迷走神経反射が起きて失神したことになるが、そのメカニズムについて窪田医師は次のように解説する。
「必ずしも絶叫によって血管迷走神経反射が起きるわけではありません。池崎さんが登場する際に極度の緊張などで血圧が急激に上がり、絶叫してふっと力を抜いた瞬間に副交感神経が優位となり、一気に血圧が下がり脳への血流が減ったために血管迷走神経反射により失神したと思われます」
血管迷走神経反射は緊張するような状況下で起きやすく、実は新型コロナワクチンの接種会場でも血管迷走神経反射による失神がたびたび見られた。
2000人に10人が失神
「私もこれまで新型コロナウイルスのワクチンを、2000人を超える方々に注射させていただきましたが、10人程度に血管迷走神経反射が見られました。ワクチン接種に過度の不安や恐怖を抱いている人は、ワクチン接種時に極度の緊張状態となり血圧が上がってしまい、ワクチン接種した途端に安心からかホっとして一気に血圧が下がり、失神してしまう人がいました」
同様の事例は全国でたびたび報告されている。
血管迷走神経反射の予防には、十分な睡眠をとり、疲れやストレスを溜めないことが重要だ。窪田医師は、普段から血流をよくすることを心がけてほしいと話す。
「失神が起きた時には、足を上げて頭を低くし、頭部へ血液が行くようにして安静にしてください。また、極度に緊張するような場面では、手をグー・パーと開閉を繰り返す、足首を回すなどすると、末梢の血流が促進され失神の予防になります」
また、池崎に対しては、今回の失神がなんらかのサインだと受け止めてほしいと注意を促す。
「普段から行っている絶叫芸で、これまでに失神したことがなかったのでしたら、今回はストレスや疲れが原因になっていると考えられます。体からのサインと考え、無理をしないよう心がけてほしいと思います」
サンシャイン池崎の失神、卒倒の様子を見た方は衝撃を受けたと思うが、日常的に起こり得るということを認識し、自分の失神を予防すると同時に、誰かが失神するのを目撃した際には、本記事を思い出していただければ幸いである。
(文=吉澤恵理/薬剤師、医療ジャーナリスト)