スマホの自撮り行為だけで幸福感向上との研究結果…インスタ等へアップしなくても
スマートフォンや携帯電話に内蔵されたカメラもどんどん進化していて、一昔前のデジカメなんて目じゃない高性能な機能のカメラが備えられているものも少なくありません。そして、1人1台携帯を持ち歩く時代。カメラもいつも携帯している状態になっていますから、美味しい料理、素敵な景色、好きなもの……そういったものに出くわしたとき、すぐに携帯を取り出して、その場でパチリと思い出を記録できる、素晴らしい時代になりました。
Instagram やFacebookなどのSNSを見ていると、自撮りの写真や美味しそうな食べ物の写真、そして自身の趣味に関する写真などをアップロードして、公開している人たちで溢れています。
人がSNSに上げている写真などはぼちぼち見るけれど、自分の写真などをSNSにアップロードするのは気が進まないし、そもそも写真自体、ほとんど撮らないという方も少なからずいると思います。もちろん、それは個人の趣向ですから、非難されるべきことでもないし、問題でもありません。
ただ、そういう写真を撮っている人たちって、なんとなく幸せそうに見えませんか?
実際、携帯やスマホで写真を撮るのは、心の健康の観点からは実は良いという研究があります。
普段の撮影者自身の笑顔も増加
アメリカのカリフォルニア大学アーバイン校のチェンらが行った実験によると、41人の被験者を集め、それぞれ以下の写真を撮るグループに分けました。
笑顔の自撮り写真
自分がうれしくなる物の写真
他者を喜ばす物の写真
被験者には、毎日1枚ずつ4週間にわたって、それぞれ与えられた課題の写真を撮影してもらいました。3週間を過ぎた頃には、これらのどのグループもポジティブな感情の増加が観察されました。つまり、まずは(SNSに上げずとも)写真を毎日撮ることだけで、幸福感が増すことがわかったのです。
それらのグループのなかでも、特に自分の笑顔を撮影したグループが一番ポジティブな感情が増え、次に自分がうれしくなる物の写真を撮ったグループ、続いて他者を喜ばす写真を撮るグループの順でポジティブな感情の度合いが高くなったということでした。
ちなみに、笑顔の自撮りを撮っていたグループは、普段の撮影者自身の笑顔も増えたということでした。自分がうれしくなる写真を撮ったグループは思慮深さに富むようになったそうです。そして、他者を喜ばす写真を撮ったグループは、家族や友人との関係が自身のストレスの軽減につながると感じるようになったということでした。
なかなか自撮りで笑顔の写真を撮るのは、特に外出先だと、周りの目が気になって撮影しにくいでしょうが、クラフトとプレスマンによる棒状のものを口にくわえて強制的に笑顔の状態をつくってその効果を調べた実験などをはじめとした、これまでの数々の研究が示してきているように、無理やりにでも笑顔をつくると、作業が楽しく感じたり、ポジティブな気持ちが高まったりします。笑顔の自撮りでも同様の効果があるのも当然でしょう。
他者を喜ばす写真を撮ったグループが家族や友人との関係が自身のストレスの軽減につながると感じるようになったというのは、そもそも他者のことを思った利他的行動ですので、対人関係にも配慮ができるようになっていくのも、うなずける気がしますね。
多くの人は、携帯電話を身の回りに常備してあるはずなので、それで心の健康が保てるなら、毎日笑顔で自撮りというのを実践してみるのは悪いことじゃないでしょう。もちろん、自撮りが恥ずかしい人も、自分がうれしくなる物を撮るのも笑顔の自撮りほどではないにしろ、効果があるわけですから、そういうものを撮影しても良いのです。また、そうやって撮りためた素敵な写真をあとから見返すのも楽しいですよね。
ちなみにSNSにアップロードするのは、承認欲求を満たすための行動ですから、ここでの話とは別になってきます。また、SNSの利用は、逆にさまざまなトラブルやストレスの原因となっているという調査もあるぐらいですので、くれぐれもお気をつけを。
(文=堀田秀吾/明治大学法学部教授)