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ハーゲンダッツも?実は大容量・業務用の食品のほうが価格が割高?当然の理由

文=A4studio
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実は大容量・業務用の食品のほうが価格が割高(「gettyimages」より)
「gettyimages」より

 スーパーマーケットなどで売られている、通常サイズの何倍もある特大サイズの大容量商品。大容量商品というと、通常量の商品より割安なイメージを持つ人が多いのではないだろうか。だが、今年5月にあるTwitterユーザーが投稿した以下のツイートが、ちょっとした話題となっていた。

「ハーゲンダッツバニラの業務用2Lを広告でお勧めされて心が動いたんだけど、計算してみたらミニカップ18個分で一個あたりはスーパーで安売りしている時の値段よりも高かった。危うく騙されるところだったぜ」(原文ママ)

 このツイートは7月末の時点で3.4万件を超える“いいね!”を獲得するなど大きな注目を集め、リプライなどには「大容量商品なのに割高な商品は一般的なスーパーでも意外とよく見かける」といった趣旨のコメントも寄せられていた。

 そこで今回はフードアナリストの重盛高雄氏に、大容量商品がそもそもどういう存在のものなのか、そしてなぜ一見お得そうなのに実は割高になっているのかについて聞いた。

業務スーパーやコストコの流行で浸透した“大容量=お得”という先入観

 まず「大容量商品」という言葉が持つ曖昧さについて、今一度考えるところから出発する必要があるという。

「何を持って『大容量商品』と呼ぶのかは、非常に曖昧です。例えば、200mlの一人用牛乳パックを基準に考えれば、1Lの牛乳パックだって大容量商品となるわけです。ですから、今回話題のツイートで言うところの大容量商品は、“企業側が通常サイズとして販売している商品を大幅に増量した商品”と定義しておきましょう」(重盛氏)

「大容量商品は個別売りの商品よりもお得である」という世間のイメージ自体、正しくない認識だという。

「大容量商品が個別売りの商品よりもお得かどうかは、各企業側のビジネス戦略や、外部要因による価格高騰など、さまざまな問題が絡みあっています。そして、意外に思うかもしれませんが、そもそも大容量商品というのは割高になるのが一般的なのです。というのも、基本的に個別売りの商品というのは競合相手も多く価格競争に飲まれがちで、企業や販売店側は価格を安くせざるを得ないもの。ですが、大容量商品は競合相手も少ないので商品単価を本来あるべき価格まで上げるのは必然なのです」(同)

 では「大容量がお得」という世間のイメージは、なぜ出来上がったのだろうか。

業務スーパーやコストコの人気が高まったのが大きな要因に思えます。業務スーパーは大容量包装がメインの生産ラインだった業務用商品に目をつけ、『たくさん入っていてお得』という売りで成功しました。また、コストコも倉庫自体を店舗に改装することで陳列コストを削減し、『大容量でお得』というイメージで世間に広まりました。

 ただ、もちろん個別売りの商品よりも大容量商品がお得というケースもあります。例えばスーパーで売っている100gや200gの豚こま肉パックを、大人数向けに量を調整した800gほどのファミリーパックと比較すれば、確かに100gあたりの単価は10円ほど安くなることが多い。これはトレーの容器などの包装にかかるコストを削減できるからです」(同)

 では、ここからは「大容量なのに割高な商品」が流通する他の理由を見ていこう。

「大容量なのに割高になる例として、スーパー側の価格設定が関わる場面というのがあります。人気のある商品の大容量版であれば値段を少々高めに設定しても、お客さんは大容量商品ならきっとお得と思って手に取るだろう、というビジネス的な戦略ですね。

 そうした例として、家庭でもサワーが楽しめるサワーの素系商品があります。これは自分の好きな濃さに割れるメリットがあるので、一概に損な商品ではないですが、飲むために自分で炭酸を買わなければならないので、実はすでに炭酸で割られた缶の商品に比べて割高な場合が多いんです」(同)

大容量「ハーゲンダッツ」が割高なのはメインの生産ラインではないから?

 だが、こうしたビジネス的戦略がすべてではないという。

「例えば、メインの生産ラインから外れた大容量商品は、生産コストが高くなるので、どうしても値段が割高になってしまう場合もあります。くだんのツイートで話題になった『ハーゲンダッツ』がいい例でしょう。

 これは私見ですが、『ハーゲンダッツ』は“安くてそこそこうまいアイスクリーム”ではなく、“少々高くても豪華で満足感のあるアイスクリーム”という企業側のブランディングが強い印象です。要するに、割高でもそれに見合う美味しさを担保している自負があり、だからこそ価格を下げる必要がないのだと思います。

 そして、そのスタンスは業務用の大容量商品でも同じ。むしろ、小分けパックが主流の『ハーゲンダッツ』からすれば、メインの生産ラインから外れた大容量商品は生産コストが高い商品です。ですから、割高な価格設定になったのではないでしょうか」(同)

 一方、食品業界全体が価格高騰の危機にある今、大容量商品が一律で値上がりする可能性はかなり高まっていると重盛氏は指摘する。

「日経MJの7月27日の報道によれば、原価高騰の影響で2022年度に価格転換をして行かざるを得ないと答えた企業は48.8%にも上るそうです。2021年度の調査が5.9%だったことを考えるとかなり深刻です。これはコロナ禍による巣篭もり需要を加味し、スーパーなどの業界が消費者のことを考えて、値上げを我慢していたことが大きいです。ですが、徐々に外食産業に客足が戻り始めたのを見て、値上げに踏み切ったのでしょう。

 価格高騰の原因としては、気候変動による農産物の不作と、それに伴う畜産業の減産などですね。また近年はウクライナ侵攻問題で、畜産の飼料であるトウモロコシが不足していることも大きな原因。ですから将来、大容量商品を含む商品全体の値段が高騰してくるのは避けられないでしょうし、大容量系の商品自体その数を減らしていくかもしれません」(同)

 最後に、大容量商品が割安か割高かを見極めるためのアドバイスを聞いた。

「商品によってお得か否かを見極めるしかない……というところなのですが、企業の裏事情などは流石に一般の方ではわからない部分も大きいでしょう。そのときのひとつの指標になるのが、こうした裏事情を教えてくれるお店を選ぶということです。

 東京を中心に展開中のスーパーであるOKストアなどは、詰め替え用洗剤のところにポップを立て、『原材料高騰で詰め替え用洗剤が値上げ中ですので、通常サイズを購入した方がお得です』などと情報を提示してくれています。こうした良心的な店舗を利用すれば、割高な大容量商品を買ってしまうリスクを減らせるかもしれませんね」(同)

「大容量=割安」という先入観は正しくないのだとアップデートしておく必要があるだろう。また、大容量商品の価格設定は企業や販売店によってまちまちという、この一事を心に留めておくだけでも、賢いお買い物ができるようになるのではないだろうか。

(文=A4studio)

 

A4studio

A4studio

エーヨンスタジオ/WEB媒体(ニュースサイト)、雑誌媒体(週刊誌)を中心に、時事系、サブカル系、ビジネス系などのトピックの企画・編集・執筆を行う編集プロダクション。
株式会社A4studio

Twitter:@a4studio_tokyo

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