年を重ねてもイキイキと健康で毎日を過ごしたいというのは誰もが思うところだろう。しかし、「80歳」を境にガクッと体が衰えてしまう。いわば「80歳の壁」が存在する。老年精神科医の和田秀樹氏は、長年この「壁」と向き合い考察をしてきたという。
もちろん、医学的、生物学的な理由も多々ある。だが、和田氏は「80歳」という節目に最大の原因があるのではないかと考えている。「80歳になったから習い事をやめる」などというように、人生に大きめのコンマをつける。何かをやめると、行動も減る。頭や体を働かせる機会も減り、心身の衰えが加速するということだ。
「食べたいものを食べて、したいことをして、前向きに暮らそう」。これは、ベストセラーとなった『80歳の壁』以来の和田氏の提案だ。そして、『80歳の壁[実践篇] 幸齢者で生きぬく80の工夫』(幻冬舎刊)は、健康長寿を実現するための80の工夫がつづられた実践本。どんなハウツーがあるのか、少しだけのぞいてみよう。
意識的に暮らしに変化をつける
いつまでも頭が冴えている状態を保つためにはどうすればいいのか。それには、日々同じようなことの繰り返しにならないように、脳を元気づけるために意識的に暮らしに変化をつけることをすすめている。
たとえば、スーパーに行ったとき、「いつもと同じもの」を買いがちだが、少し違うものを買ってみる。いつもはメロンパンだが、違うパンを選んでみる。飴玉も、いつもとは違う味を試してみる。「ふだんと違う」ことにチャレンジしてみるのだ。日々の暮らしを「スモールチェンジ」する。和田氏が設定する目標は週に2度(1年に100回)だ。失敗もあるかもしれないが、それが脳の「惰眠」を防ぐという。
「3~5行の日記」を手で書いてみる
日記をつける習慣は、脳と体にいい影響をもたらすと和田氏は述べる。日記を書くためには「思い出す」ことが必要になる。それは格好の「想起トレーニング」になるのだという。「日記に書くことなんてありませんよ」と思う人もいるだろう。しかし、そういう日こそ、脳を鍛えるチャンスだ。書くに値することを見つけることは、高度な頭の体操となる。
また、日記はパソコンに打ち込むのではなく、日記帳に手書きで書いてみよう。文字をペンで書くことは、キーボードを打つことよりもはるかに複雑な「手作業」。より脳を刺激することができるはずだ。
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ここでは脳に刺激を与える習慣を取り上げたが、本書では食との向き合い方や健康との付き合い方、わがままになること、睡眠のとり方など、さまざまなジャンルから80のハウツーが掲載されている。まずは一つずつ始めていくことが、老いに負けずに、幸せに生きることにつながっていくのかもしれない。(新刊JP編集部)
※本記事は、「新刊JP」より提供されたものです。