つまり、自然環境と仕事のパフォーマンスは密接に関係しているともいえるが、順天堂大学医学部附属順天堂医院の小林弘幸教授(総合診療科)によれば、今年は特にパフォーマンスの落ちやすい環境だったと、次のように振り返る。
「秋から冬にかけては仕事のパフォーマンスが落ちやすい。疲労を感じやすく、免疫力の低下や自律神経の不均衡が原因で、感染症にかかりやすいからです。そして今年の夏は特に記録的な猛暑で自律神経がやられてしまい、災害の頻発でストレスを感じる人が多かったです。経済が上向いたと言われていても、現場は実感できず、それらの要素がボディーブローのように体にダメージを与えているケースが多く見られました」
では多くの人が体の調子を崩したまま夏を終え、これから年末年始の忙しい時期を迎える中、体調を回復して良い状態をキープしていくためには、どうすればよいのか?
小林教授は、5つの生活習慣改善ポイントを挙げる。
「第1に、早寝早起きで睡眠時間を確保する。第2に、夜のPCやスマートフォン(スマホ)などの操作は一切やめる。第3に、深酒と夜の食べ過ぎを控える。第4に、朝食を絶対に取る。第5に、シャワーで済ませないで必ず浴槽に入って20分間お湯に浸かる。お湯の温度は40度に設定する。このようにして生活習慣を立て直さないと、年末から年始にかけて今度はボディーブローでなく、カウンターパンチを喰らってしまい、年明け早々から寝込むことにもなりかねません。さらに12月は宴会なども増え、太りやすい時期なので、逆に体重を2kg落とすことを目標にするとよいでしょう」
●ストレスによる便秘、どう防ぐ?
さらに自律神経の管理には、服の着方も重要だという。小林教授によるとコートを着用するかどうかは、寒さを感じる気温10度が基準だ。
「11度なら寒さを感じず、9度に下がると寒さがきつくなる。例えば18度の日にコートを着て電車の中で汗をびっしょりかいたら、自律神経がやられてしまいます」(小林教授)
自律神経が乱れて発症しやすいのは便秘である。便秘は重度になると、数週間も便が排出できず腸にたまり体全体に悪影響を及ぼすケースや、外科的方法で便を取り出さなければならないケースもあるほど、時に危険な病気である。そんな便秘にかかる原因には、生活習慣だけでなくストレスも多い。便秘は若い女性に多い病気というイメージがあるが、小林教授は「50歳を過ぎたら、男性も女性も関係ないです。私の患者さんの男女比は5対5で、原因の多くがストレスです」と実態を明かす。
日本で初めて「便秘外来」を開設した、腸のスペシャリストでもある小林教授は、便秘対策として次の3つを勧めている。
(1)腸の活動は午前0時過ぎにピークを迎え、睡眠前後の3時間に最も活発になるので、この時間帯に腸内環境を改善するヨーグルトを摂取する。
(2)5秒かけて鼻から息を吸い、10秒かけて口から息を吐く。これを3分間を目安に繰り返すと、体と心がリラックスして副交感神経の機能が高まっていく。