麺になった状態でさらに保管したものは麺線熟成といい、コシがさらに強くなります。麺を外部から仕入れている店は、麺を裸の状態で木箱で仕入れる場合と、1食分ずつ、袋に入れて仕入れる場合があります。麺は配合だけでなく、熟成方法、太さ、縮れがあるかどうか、包装形態までこだわる店があるのです。
(2)スープへのこだわり
ご当地ラーメンの違いは、スープが基本かもしれません。豚の頭、豚の骨、鶏の骨、鰹節、昆布、野菜等、さまざまな素材からスープを取っています。原料を寸胴鍋などで長時間煮込んでいる店もあります。支店を出した時には、スープは本店で仕込んで運ぶ場合があります。さらに支店などが増えていくと、メーカーにスープの製造をさせている店もあります。
スープは、原料から煮出す場合、原料を煮出したエキスを使用する場合、エキスの味がする調味料を使用する場合、スープそのものを仕入れる場合があります。食品工場で製造したスープと、店で早朝から煮出したスープの味の差はほとんどないかもしれません。しかし、店主が客の顔を思い出しながら、毎日仕込むスープには、味以上の想いが客に伝わります。
(3)チャーシュー
「何度、家庭でチャーシューをつくっても、あの店のとろとろの美味しい味は出せない」と客が言うような美味しいチャーシューが筆者は好きです。厚切りチャーシューが肉の線維と平行に切られているために、チャーシューがうまく噛み切れず、繊維に沿って割けるようなチャーシューではプロの味とはいえません。
しっかり味が付いているのにとろけるような美味しいチャーシューをつくるためには、豚肉の構造を理解する必要があります。豚肉はミオシンとアクチンでほぼ構成されています。しゃぶしゃぶなどを行う時、煮えたぎった出汁の中をくぐらせるのと、60℃に管理した出汁の中をくぐらせるのでは、肉のおいしさが大きく変化します。
筋肉中の半分を占めるミオシンは45~50℃で熱変性し、20%を占めるアクチンは55~65℃で変性するといわれています。ミオシンのみが変性し、アクチンが変性しない状態が、とろけるような肉のおいしさの状態になるのです。細菌は、60℃、30分で死滅するとされ、細菌が死滅しアクチンが変性しない状態で豚肉を調理できれば、硬いもも肉なども軟らかくなります。豚肉はしっかり火を通さないと寄生虫や細菌が危ないと教育されているため、必要以上に火を通しがちです。サシが入った牛肉であれば、加熱しすぎても脂身が多いために美味しく食べることができますが、赤身がほとんどの豚肉は、加熱しすぎると硬くなってしまいます。とろとろのチャーシューをつくるためには、加熱しすぎないことが一番大切なのです。