その1つの象徴が、Andoridへの対応だ。Androidのアプリは初期からあったが、Ustream最大の魅力である視聴者からのTwitter書き込みができなかった。いつまで経っても改善されず、12月の現在でもAndoridのUstreamアプリからのTwitter書き込みはできない。
これにはUstreamの構造の問題がある。ソフトバンク子会社のUstream Asiaは、日本とアジアだけの法人であり、Ustreamのサービス本体はアメリカのUstream, Inc.と、ハンガリーの開発拠点でつくられている。ソフトバンクが20%出資しているものの、実権はアメリカとハンガリーにあるため、日本の要望はそう簡単に受け入れられないのだ。
一方、ニコ動は日本のドワンゴ、TwitCastingは日本のモイ株式会社がつくっており、日本のユーザーの要望を受け入れて改善してきた。しかし、Ustreamは改善の歩みが遅く、ユーザー離れの一因となった。
このように「囲い込みの失敗」や「ブランド力の低下」などにより、Ustreamで配信してきたコンテンツが少しずつ離れていく。ネット生放送でもっとも人気があったDommuneはYouTubeに移り、視聴者が多いゲーム系配信もニコ動へ、個人ユーザーの多くは手軽なスマートフォン向けのTwitCastingへと移っていった。現在の日本のUstreamは企業の発表会、イベント中継、プロモーションが中心であり、独自のコンテンツは少数となっている。
チャンネルは残るが、日本独自サービスは廃止される可能性大
Ustream Asiaは当初、3年での黒字化を目指していたが、通年での黒字は達成できなかった模様だ。株式公開されていないため決算のデータがなく詳細は不明だが、黒字化の発表がないことから推測できる。
Ustream Asia撤退を決めたのは、アメリカの本体側なのか、ソフトバンク側なのかは不明だ。筆者の推測にはなるが、成長市場であるアジアの法人・Ustream Asiaが赤字であったことが、本社のUstream, Inc.の足を引っ張っていたのだろう。撤退はアメリカ側の意向が強いのではないだろうか。本社が新しい展開をするにあたって、負担となっていたアジア法人を切った可能性が高い。
ソフトバンク広報部によれば「ソフトバンクからUstream, Inc.への出資比率20%は変わらない」とのことだ。しかし、今後の展開によってはこの出資比率も変化しそうだ。
今後について、Ustream Asiaでは以下のようにアナウンスしている。
・1月31日で運営をUstream Asiaから、Ustream, Inc.へ移管
・日本での有料サービスは同様のものを準備中