そもそも「Adobe CS」とは何かといえば、Adobeが提供しているクリエイティブな開発現場向けアプリケーション群をセットにしたパッケージのことだ。フォトレタッチソフト「Phtoshop」シリーズが最も有名だろう。1本単位で購入すればそれぞれ数万円するものが、パッケージ化されて割安で購入できるようになっているのだが、それでも価格は高額だ。
最新版であるCS6の全部入りパッケージ「Adobe Creative Suite 6 Master Collection」の定価は33万4950円。もしこれが無料になるのならば、多くの人が色めき立つのもムリはない。
しかし、本当にそんなことがあるのだろうか?
●Adobe CS2が無料でダウンロード&インストールできるのは本当
実際に、Adobe CS2に含まれるすべてのアプリケーションが、誰でも無料でダウンロードでき、インストールして利用することもできる。これは別に、何かのミスで一晩だけ公開されてしまっていたというわけでもない。
ダウンロードにあたってはAdobe IDというものが必要だが、これは無料で登録できる。リストにはPhotoshop、InDesign、Illustrator、Acrobatといった多くの人が欲しがりそうなものはばっちり揃っている。日本語版のプログラムも用意されており、インストール時に入力するシリアルナンバーも添えられているという親切さだ。
また、公式にはWindows XPまでしかサポートされていないようだが、実際にはWindows 7でもほとんどのアプリケーションが動く。2005年にリリースされたものとはいえ、機能的にはとても無料で利用できるようなものではない。
●Adobe側としては「無料公開のつもりはない」らしい
無料公開された理由は「CS2用のアクティベーションサーバを停止するから」だそうだ。Adobe製品はインストールする時、インターネットに接続してシリアルナンバーを入力し、正規ユーザーであることを確認する「アクティベーション」作業が必要だ。その作業を担当するサーバが停止するということは、正規のCS2ユーザーも再インストールができなくなってしまうという意味になる。
古いアプリケーションではあるが、使い続けるユーザーもいる中で再インストールができない状態で放置というわけにはいかない。そこで「アクティベーションできなくても、インストールできるように専用のプログラムファイルとシリアルナンバーをここに置いておきますね」という意味で公開されたのが、今回の無料配布騒ぎの元となったものだ。
つまり、あくまでも「CS2の正規ユーザーのために」用意されたものであり、「誰でも持って行ってOK」なものではない。ただこの言い分が公開時には添えられていなかったため、ニュースサイト等でも「無料でダウンロード、インストールできる」ことだけが取り上げられ、広がった。
現在ではダウンロードページにもその旨が表示されているし、各記事に正規ライセンスを持たないユーザーの利用は、ライセンス違反となり得るという記述が追加されている。
●結局使っていいのか?
Adobeといえば、アプリケーションの不正利用摘発に熱心な企業というイメージがある。そんな企業の行動としてはどうもおかしな印象だが、結局このCS2をダウンロードしてインストールすると捕まったりするのだろうか?
個人的な見解だが、個人でちょこちょこ使っている分には問題にならなそうだ。公開当初に注意事項を添えていなかったのだから、Twitter等で第一報を聞いて即座にダウンロードを済ませてしまった人の中には、そんな事情を知らない人もいるだろう。そうでなくとも、いくらでもタダで持って行ける環境を放置しておきながら、実際に使った人は厳しく取り締まるというのはアンバランスだ。