特に気になるのは料金だ。各社共にライトユーザー向けに、月額5000円を切るプランを打ち出してはいるが、実際のところこれらをユーザーが積極的に選ぶかどうかは、キャンペーンや割引での対応次第というところも大きい。ユーザーは契約したり、端末を購入したりする際にキャンペーンや割引施策を強く意識するが、これまで各社が実施してきたキャンペーンなどを見ると、高速通信データ容量が5GB以上のプランでないと適用されない、あるいは条件的に不利になるものが多かった。
そもそも携帯電話各社は、通話定額の料金プランを導入した時点で、データ通信の利用を増やすことで売り上げを高める方針に転向している。それゆえ、小容量で安価な料金プランを契約する人が増えてしまうことは減収要因でしかない。今後、大容量のプランを優遇するキャンペーン施策によって、ライトユーザー向けのプランをあまり契約しないよう、ユーザーを誘導することも十分考えられる。
総務省は、端末の過剰な割引を抑えたことで発生する利益で、小容量の料金プランの減収を補うべきとしている。だが、14年にNTTドコモが「カケホーダイ」を導入した際、最も容量が少なく料金が安い「データSパック」の契約者が多くを占めた結果、業績の大幅な下方修正を余儀なくされている。
そうした過去を考えれば、新料金プランが与える影響は決して小さくないとはいえ、キャリアも販売に二の足を踏んでしまう可能性があるだろう。まずは、キャリアがライトユーザー向けのプランを、実効性を持つ形で提供するのかどうかが、今後の注目ポイントのひとつになるといえそうだ。
また端末の販売に関しても、3社側の対応だけで実質0円を切った販売をどこまで抑えられるかは未知数だ。そもそも携帯電話を実際に販売するのは、携帯電話事業者ではなく販売代理店である。しかもMNPでの乗り換えユーザーに対する高額キャッシュバックは、販売代理店が販売奨励金などを用いることで自主的に実施していることが多い。さらに最近では、キャッシュバックへの批判が増えていることもあって、ゲリラ的な割引施策を実施するケースが多くなっている。
NTTドコモも月々サポートは減らすとしている一方で、代理店に向けた販売奨励金は据え置くとしている。それだけに、販売不振の代理店などが、独自でゲリラ的に値引きやキャッシュバックを実施する可能性はまだ否定できない。
総務省側もそうしたことを懸念し、行き過ぎた割引やキャッシュバックを実施する代理店に関する情報提供窓口を設けたり、全国の販売代理店のスマートフォン価格調査を実施したりするなどの施策を、2月2日に発表している。これらの施策によって、キャリアや総務省がどこまで販売代理店に目を光らせ、割引を抑え続けられるか大きく問われるところであろう。
(文=佐野正弘/ITライター)