ジャパン・マネーを目当てに、アジア諸国の女性が日本へ殺到したのは、バブル期の頃。当時の“国際結婚カタログ”には、16、7歳の女の子がずらりと並び、「日本の男性につくすのが夢です」「お金より、愛情を求めています」など、業者が考えたとしか思えない文句が並んでいる。
「むかしは“花嫁の夜逃げ保証付き! 安心して当店が紹介する女性と結婚して下さい!”なんてやっていましたよ(笑)」とは、中国人の国際結婚を仲介する業者の話だが、お金と国籍を目当てに結婚した中国人が夫を置いて逃げ出すことなんて、よくある話だったのだ。
現在の中国はGDPで日本をしのぐ経済大国となったし、日本人もバブル期のように大金を持っている人ばかりではなくなった。この変化は、日本の国際結婚マーケットにどのような影響を与えたのだろうか? 2012年に出版された『ニッポン異国紀行 在日外国人のカネ・性愛・死』(石井光太/著、NHK出版/刊)に、中国人向けの国際結婚仲介ビジネスの変化が解説されている。
■“お金”と“嫁不足”のトレードオフでうまくいっていたバブル時代の国際結婚
バブル時代、国際結婚仲介ビジネスの多くは、地方で貿易などを営む経営者が副業的に行っていたという。海外出張の際に、現地のクラブなどで知り合ったブローカーを通して、貧しい農村から“日本人と結婚したい女性リスト”を入手して日本人に斡旋していたのだ。当時、日本の農村地域は、若者の地方離れによる過疎化で花嫁不足に悩んでいた。そのため、裕福な日本人と結婚したいと願う女性たちと思惑が一致していたのである。
一方、日本人は日本人で、魅力的な中国人女性を望む声もあるため、“営業努力”としてクラブのママと愛人関係になって、クラブに在籍するホステスを結婚相手として紹介するケースもあったとか。
■“花嫁の夜逃げ保証?”お金だけが目当ての結婚も…
日本にやってきた中国人女性には2パターンあったという。“豊かな日本人と結婚して貧困から抜け出したい”と考えている女性は、家庭に尽くして日本に根を下ろすように努めていた。しかし、“日本でお金を稼いでいずれは帰国したい”と考えている女性は、国籍だけ手に入れたら家から逃げ出してしまうというのだからたまらない。逃亡を防ぐために、地域ぐるみで監視し合ったり、1日中チャイナドレスを着せて逃げられないような工夫をしたりもしていたのだという。
国際結婚仲介業者には、成約時に400万円もの紹介料を払うことになるが、新婚早々逃げられてしまってはショックもでかい。少しでも心理的負担を減らそうと「花嫁夜逃げ保証」や「逃亡お詫び金」なるサービスも存在した。
■日本人以上に“好条件”を求められる中国人との国際結婚
現在は、中国にもたくさんお金持ちはいるし、日本人もバブル時代のように羽振りが良い人ばかりではない。そのため、中国人女性との国際結婚は求められる条件がどんどん高くなっているという。“年収1千万円以上”“広い土地がある”“大きな店を持っている”は当たり前の話で、ある意味、日本の女性よりもシビアに“条件”で見定めされるという。「わざわざ日本人と結婚するのなら、中国人より条件のいい人と結婚しなければ意味がない」ということなのだろうか。