「局部壊死」――。23日、Twitter上ではそんな異様な言葉がトレンドに入った。同日正午時点で、ツイート数は1万2800件を超えていた。そのままの意味を真に受ければ、1936年5月に発生した「阿部定事件」(仲居の女性が旧東京市荒川区で愛人の男性を扼殺し、体の一部を切り取った事件)のような猟奇的な事件が発生したのかと思うかもしれない。実際、Twitter上でも「人身事故かと思った」「すごいトレンドだ」などと多くのユーザーが困惑していた。
スマホゲームの新章の題名でした
実際はスマートフォン向けゲームアプリ『アークナイツ』でリリースされる新しい章のタイトルだった。同ゲームは2020年1月よりiOS及びAndroid端末で配信されている人気のタワーディフェンス型ゲームで、運営はyostar、開発はHypergryphが担い、中国本土で開発が行われている。中国語簡体字表記でのゲーム名は「明日方舟」。トレンド入りした新章のタイトルは中国本土では簡体字で「局部坏死」、英語では「partial necrosis」と訳されていた。どうやら、原作のニュアンスをできるだけダイレクトに伝えようとして、簡体字を日本語の漢字にそのまま置き換えてリリースした結果、このような反応を生み出したようだ。
中国では格式高い言葉
実際、中国ではどのような意味の言葉なのか。東京都内の中国語学学校の女性講師は少し困惑したように話す。
「確かに日本語では、そう解釈されがちですよね。中国本土ではオフィシャルな言葉なのですが。例えば中国人民大学の康晓光氏の有名な論文からの引用ですが、『在正常情況下,大衆只能製造局部的反抗,而中國政府具有鎮壓局部反抗的能力』(通常の状況下では、大衆は地域的な反抗しか生み出すことができず、中国政府は地域の抵抗を抑制する能力を持っている)といったように、非常に政治的、学術的な場面でも使われる言葉です。『全面戦争』に対する『局部戦争』という表現もありますね。日本のマスコミなどが妙な隠語を使うせいで、言葉の意味がおかしくなっているんじゃないですか」
いずれにせよ、日本人はこの言葉に反応しすぎなのかもしれない。
(文=編集部)