日本向け機能の強化は行政の影響を受けてか
なぜアップルが、新しいiPhoneでここまで日本市場に向けた注力を進めてきたのだろうか。そこには日本の行政の影響によって、携帯電話市場が大きく変化しようとしていることが影響していると推測できる。
昨年末に総務省のICTサービス安心・安全研究会が実施した「携帯電話の料金その他の提供条件に関するタスクフォース」を受け、総務省は今年4月から「スマートフォンの端末購入補助の適正化に関するガイドライン」を打ち出した。そして総務省はこのガイドラインに沿う形で、従来一般的に実施されていた、スマートフォンなどの端末を“実質0円”で販売するなど、本来の価格から大幅に値引きして販売し、それを毎月の通信料で回収する手法に厳しい目を光らせるようになったのだ。
その結果、スマートフォンの実質0円販売は多くの店舗で姿を消し、番号ポータビリティで乗り換えるユーザーに対する優遇施策も大幅に縮小。キャリアのスマートフォンの販売が低迷する一方、安価な料金でサービスを提供するMVNOや、1万円台の低価格なSIMフリースマートフォンの人気が高まるなど、市場動向が大きく変化してきている。
こうした傾向に追い打ちをかけるかたちで、iPhone 7/7 Plusの発表からおよそ1カ月前の8月2日には、公正取引委員会が「携帯電話市場における競争政策上の課題について」という報告書を公表。MVNOの新規参入促進の観点から、現在の携帯電話市場の商取引慣行に対する課題や問題点を指摘している。
その多くは先の総務省のタスクフォースやガイドラインに近いものとなっているが、端末の中古販売に関しては、キャリアだけでなく端末メーカーに対しても、国内での流通抑制や販売制限をすることが独占禁止法上問題になるとしていることを明らかにしていた。
このように、行政が従来のキャリアの端末販売手法に対して厳しい対応を取るようになったことから、今後iPhoneなどの高額な端末ほど価格が上昇しやすくなり、従来のようにユーザーが購入しづらくなると考えられる。