ざっくりいうと、NFCはSuicaなどの親戚だ。これが搭載されているスマートフォンはおサイフケータイ対応、に似ているイメージになる。しかし実際にできることは少々違う。
●NFCは「国際規格」
NFCは、「Near Field Communication」の略だ。近接距離通信という意味であり、10cmくらいの範囲で非接触で通信できるものについて定めた規格となっている。我々日本人にとって最も身近なのは、先にも挙げたとおり「Suica」や「おサイフケータイ」だろう。もちろんこれらも「NFC」に含まれる。
ただSuicaやおサイフケータイで採用されているのは、ソニーの独自規格であるFeliCaという技術だ。これはほとんど日本でしか利用されていない。似たような技術で海外で多く使われているものにTypeAやTypeBといったものがある。これらを使っているのが、運転免許証や会社の入退室管理に使っているカードなどだ。
つまり、こうしたものは全部NFCであり、極端なことをいえば日本のガラケーはほとんど全部NFC対応だったともいえる。ただ現実には、NFCの一部でしかないFeliCaのみを搭載しているのではなく、上位互換規格であるNFC規格に適合しているもののことをNFC対応と呼んでいるのが現状だ。
●iPhoneにNFCが載れば、おサイフケータイになる?
日本では、おサイフケータイやSuicaなどの交通系カードではFeliCaを利用し、運転免許証や住基カードではTypeBを採用、企業での入退室管理等にはTypeAを使う、というような使い分けがされてきた。これは、それぞれに特徴があったからだ。
まず、TypeBは国際規格であることを理由に、公的なものに多く採用された。FeliCaはソニーのものであり、一応国際規格にそっている部分もあるのだが、海外でも確実に使えるわけではない。もしソニーが倒産したら国で発行しているカードもまともに使えなくなってしまう、では困るという理由もありそうだ。
一方、TypeAは安価であるというメリットがある。だからこそ、特別なセキュリティや速度を要求されない入退室管理等で採用されることが多かった。
ではFeliCaはどうかというと、国際規格に完全準拠しているわけではないし、高い。しかし圧倒的に速いという特徴がある。これが、一企業がつくった規格なのに、交通系カードで採用された理由だ。Suicaの場合、改札機にカードが近づいたことを察知し、そのカードが正しいかどうかという認証を行い、今いくら入っているかのデータを読み出して判定、料金を計算して利用後の数値を書き込んで判定、という一連の流れを、なんと0.2秒で行っている。この速度があるからこそ、FeliCaが採用されたわけだ。
では、NFCにそんな速度が出せるのかというと、現時点では不明らしい。というのも、FeliCaはソニーが管理者として、なんでもガチガチに決めている。つながりやすさも速度も暗号化も、ソニーがばっちり決めていて、その決まりに沿っていないものは一切使えない。だからこそ、1分に60人を通過させるような駅改札でも利用できた。しかしNFCは国際規格なので、あくまでも基本的なところが決まっているだけだ。
とりあえず日本では、携帯キャリアが横の連携をとってNFCを使いやすいものにしようという取り組みがあるようだが、もしiPhoneの新モデルがNFC搭載になったとしても、即座に乗車券として利用できるようになることはないのではないだろうか。
●NFCでできることは?
ではNFCで何をするのか? これは業界内でも検討中の段階だ。今のところ、広告やポスターに仕込まれたタグを読み取ってコンテンツを見せるというQRコードの置き換えのような使い方に関して、電車内やサンリオピューロランドなどで実証実験が行われている。