オレオレ詐欺やSNS乗っ取りに騙されない方法
――「正常性バイアス」を利用した犯罪に巻き込まれないようにするには、どうすればいいのでしょうか?
広瀬 「おかしい」と感じた最初の段階で、危険を見過ごさないことです。私たちのパーソナリティはクルミのようになっています。殻の部分は固いので中身は守られているわけです。けれども、これはいわば仮想の殻です。クラッカーがあれば簡単に割れてしまいます。それと同じように、「自分は大丈夫だ」と勝手に確信していても、それは仮想にすぎません。仮想の安全意識は簡単にヒビが入って、弱い中身があらわになってしまいます。
誰しも、危険を察知したときに「おかしい」「もしかすると、自分は危険な状況ではないのか?」と感じる“疑いの棘”を持っています。まずは、その棘がもたらす痛みの刺激に敏感になることです。そして、「疑いの棘の痛み」を感じたときには、正常性バイアスが働いていないかどうかのチェックを習慣化すれば、騙されなくなります。
正常性バイアスを利用した犯罪は、「オレオレ詐欺」だけではなく、今回のようにITを駆使したものも登場しています。それらに直面したときには、次のような公式が当てはまるのではないでしょうか。
「正常性バイアス」と「事柄の重要性」をかけ合わせることで、「騙されることによる損害の大きさ」が決まります。たとえば、自分の身に危険が及ぶことでなければ「事柄の重要性」はそこまで大きくはないため、損害も小さくなります。
また、「正常性バイアス」は言い換えれば、「自信」や「無防備さ」とも言えます。それは確たる自信ではなく、「安心したい」という気持ちが「自分は大丈夫だ」と変化した結果としての自信です。その自信や無防備さが大きい状態も騙されやすい状態といえます。
「騙されたときの損害」を小さくするには、「客観的判断力」で、「正常性バイアス」が働いていないかどうかをチェックするしかありません。チェックには大きなコストはかからないため、費用対効果の面でもメリットが大きくなります。
――ありがとうございました。
(文・構成=流石香織/株式会社フォークラス・ライター)