そんななか、日本国内でも従来よりランニングコストを抑えたスマートフォンを提供しようという動きがある。その1つがNECビッグローブの「ほぼスマホ」というサービス。最初にサービスが開始されたのは、2012年の6月なのだが、最近、ダイヤルイン可能(普通の電話番号で電話がかけられる)なIP電話アプリ「BIGLOBEフォン・モバイル」との組み合わせで、本当にほぼスマホのように使えることで再び注目を集めている。
ほぼスマホの特徴は、最低月額2980円というリーズナブルな価格でスマートフォン(スマホ)が使えること。これは一般的なスマホの利用料金の半額程度だ。端末はNECの「MEDIAS for BIGLOBE LTE」を使ったサービスで、高速なLTE接続が可能でスマホのように使えるが、電話機能にIP電話を利用するため、緊急通報をすることはできない。
この点は、頻繁に緊急電話をかける必要がない人にとっては、特に問題にはならない弱点だろう。スマホでは、コミュニケーションの主役はメールやSNSなので、ますます問題にはならない。また、IP電話としては普通のことではあるが、「BIGLOBEフォン・モバイル」を使っている人となら、Skypeのように無料で通話ができるという利点もある。
このようにIP電話を使うことを前提にしたスマホの登場には、今後さらにIP電話が普及することを予感させてくれる。しかし、より興味深いのは、この端末をBIGLOBEがリリースしているということだ。通常のスマホのように通信キャリアがリリースした端末ではないというところにポイントがある。
BIGLOBEはモバイル通信ビジネスに関しては、通信キャリアから回線を借りて又貸ししている、MVNO(Mobile Virtual Network Operator)と呼ばれる業者。従来は系列会社のモバイルルータなどを使ったデータ通信サービスを中心にビジネスを行なっている。そして、同様にデータ通信サービスだけで成立するスマホをリリースしたというわけだ。
通信費、基本料などの毎月支払うランニングコストが高いのがスマホの大きな弱点の1つだが、ほぼスマホは通信だけを行うことで、ランニングコストを下げている。また、スマホの先進ユーザーなら、IP電話を使って通話を行うのは当然の方向性と感じることだろう。今後、このようなIP電話を使うことを前提にしたコスパの良いサービスが登場し、普及していく1つの先駆けとなる予感もする。
(文=一条真人/フリーライター)