急激な社会の変化や過重労働、人間関係など、さまざまな理由からメンタルを病んでしまう人が増え続けている。その中でも、IT技術者は比較的「病みやすい」環境に身を置いているため、メンタルのケアをしっかり行わなければいけない。
この連載では、カウンセラーでありベリテワークス株式会社代表の浅賀桃子氏が執筆した著書『IT技術者が病まない会社をつくる』(言視舎刊)を通して、IT企業におけるメンタルヘルスマネジメントを紐解いていく。そして、IT業界特有の病んでしまう環境、メンタル不調者が出づらい組織の特徴、どんな組織をつくっていけばいいのか、事例を交えながら「病まない会社」づくりをサポートしていく。
心理的安全性がない組織はメンバーの不安が増す
今回のテーマは「メンタル不調者が出づらい組織とは?」だ。
ここでキーワードとなるのが「心理的安全性(psychological safety)」。たとえばこんな事例に心当たりはないだろうか。
IT業界未経験で中途入社してきたCさん。配属されたチームの上長であるBさんは「わからないことがあったら質問をまとめて早くSlack上で共有してほしい」と述べる。しかし、Cさんはなかなか質問をすることができず、Bさんからガミガミ怒られてしまう。「わかりました」とは言うものの、対応が変わらないCさんにBさんは困り果ててしまった。
Cさんはなぜ質問を早くチーム内に共有できなかったのか。浅賀氏が面談したところ、「チームメンバーが忙しそうで、質問をすることが心苦しい」「こんなこともわからないのかと思われそう」といった本音が出てきた。こうした不安が重なって、質問ができなくなっていたのだ。
これはつまり、チームに心理的安全性が不足している状態だったと言える。ここを抜け出すには、上司サイドのマネジメントの舵取りが重要になる。
Cさんのケースでは、上司のBさんが意識的に「若手から」の発言を求め、発言機会が平等になるようにした。声が大きく、立場が強いメンバーに呑み込まれないように配慮したのだ。結果、Cさんは「必ず意見を聞いてもらえる」「自分の意見をはじめのほうに言うことが求められる」という意識に変わり、ミーティングを自分事としてとらえ、発言できるようになっていった。
「1 on 1」で部下が話しやすい環境をつくる
BさんとCさんのチームのケースは心理的安全性の不足を克服するチームの好例だが、実際は「何から手を付けたらいいのかわからない」ということもあるだろう。
浅賀氏が勧めるのは「1 on 1」だ。これは上司と部下で行う、定期的な1対1での面談で、上司から部下への一方的な伝達になりがちな人事面談とは異なり、双方向のコミュニケーションを取ることが大切だ。いわば「対話」の場ともいえる。
うまく「1 on 1」を活用できている組織を見ると、業務内容だけではなく、雑談の要素も取り入れたり、上司が話しすぎないようにしたり、部下自身の価値観について相互理解を深めていたり、と部下側が話しやすい雰囲気づくりを行い、そこで業務の振り返りをするなどして内省できる環境をつくっている。
浅賀氏はメンタル不調者を出づらくするために、以下の2点を踏まえて心理的安全性の高い組織を目指してほしいとしている。
・上司でも部下でも、自分自身の意見や主張をメンバーに表明できる
・相手の表明した意見が違うときは自分の意見との相違を伝えたうえで、組織の目標達成に向けて合理的な話し合いができる
自分の意見が表明しにくい、相手に迷惑をかけるかもしれない、自分がバカにされるかも……。こうした不安は、組織の成長スピードを鈍らせてしまうだろう。あなたのチームの心理的安全性は保たれているだろうか?
(文=編集部)
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『IT技術者が病まない会社をつくる』 IT業界に朗報! コロナ禍の中、メンタルヘルスに配慮しながら、業績をアップできる組織には何か必要か? IT事業について、現場・人事・経営者の3つの視点を兼ね備えたカウンセラーとして高評価を得ている著者が、キャリア・メンタル双方の側面から、組織づくり・管理法を提案する。